最大のげっ歯類、カピバラに独自のがん免疫療法

新しい治療法の開発につながる可能性

2018.10.02
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

がんになりにくいのはなぜ?

 とはいえ、体がこれほど大きくなることにはデメリットもある。食物を多く要することのほか、カピバラは増大するがんのリスクと闘わなければならなかった。

【動画】がん入門:がんとはどんな病気で、どのように発生するのだろう。遺伝子の役割や、最も多いがんの種類などについて学ぼう。(解説は英語です)

 各細胞が悪性化する確率が同じだとすると、多くの細胞からなる動物のほうががんになる可能性が高いはずだ。が、実態はそうではない。たとえば、ゾウはネズミの何千倍、何万倍も大きいが、がんになる確率は変わらない。これは「ペトのパラドックス」として知られ、大型の動物はがんを予防するために様々なメカニズムを進化させてきたことがわかっている。

 たとえば、アジアゾウやアフリカゾウは、細胞分裂の際に念入りにDNAのコピーミスをチェックすることで、がんを引き起こす遺伝子変異の数を抑えている。また、ホッキョククジラは、チェックなしで細胞が分裂するのを防ぐメカニズムを進化させている。(参考記事:「ガンを防ぐ「ゾンビ」遺伝子、ゾウで発見」

 ヘレーラ=アルバレス氏の研究チームは、カピバラが全く異なる戦略を進化させてきたらしいことを発見した。カピバラのゲノムが示していたのは、分裂が速すぎる細胞を見つけて破壊する免疫システムが、他の動物よりもはるかに優れているようだということだった。つまり、カピバラは独自のがん免疫療法を進化させてきたのだ。

「とても驚きました。まさか免疫システムが関わっているとは思いませんでした」とヘレーラ=アルバレス氏は話す。

「彼らが発見したことは、他の動物で起こることとは相当違っているようです」と、米シカゴ大学の進化がん生物学者、ビンセント・リンチ氏は言う。「我々が考えていたほど、がんを抑える方法を進化させることは難しくないのかもしれません」

 リンチ氏もロス氏も、この研究を綿密かつ独創的だとして高く評価している。ただし、今回の結果は予備的なものに過ぎず、まだまだ追加の実験が必要だということについては注意を促している。

ギャラリー:ホッとする動物たちの寝顔 写真24点
脱力して木にぶら下がったヒョウ(Photograph by Joianna Carson, National Geographic Your Shot)

文=Carrie Arnold/訳=桜木敬子

おすすめ関連書籍

先端科学の現場で見る 人体の神秘

DNAや脳、生死など“人体”にかかわるテーマにフォーカスしたムックです。 研究の最前線に立つ人たちに取材し、フィールドにも足を運んで人々の声を聞き、ナショジオならではの生の情報を、豊富なビジュアルとともにお伝えします。

定価:本体1,400円+税

  • このエントリーをはてなブックマークに追加