第二次大戦の空襲のエネルギー、宇宙に達していた

歴史的データを活用した画期的な研究、宇宙天気予報への貢献に期待

2018.10.01
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 もちろん、雷と爆弾には大きな違いがあるとスコット氏は言う。けれども、今回判明した関連は、雷に似たほかの自然現象も電離層に影響を及ぼすことがあるという説を補強する。

 スコット氏とメージャー氏は、1940年と1941年にドイツがロンドンを空襲した「ロンドン大空襲」のデータも調べたが、空襲と電離層の変化の関連を特定するには、この空襲はあまりにも連続して行われてすぎていた。(参考記事:「世界を変えた航空戦『バトル・オブ・ブリテン』」

 スコット氏は、ロンドン大空襲の悲惨さを改めて実感したと言う。「私の2人の叔母はロンドン大空襲の際に9歳と11歳で亡くなっています。私の家族は、戦争の悲惨さを身をもって知っています」

【参考動画】70年以上の歳月を経て現像された写真:第二次世界大戦中の世界のタイムカプセルの鍵を開けよう。写真家のリーヴァイ・ベトウィーザー氏は、米ボストン港からフランスのル・アーブルまで、様々な地名が記された31本の未現像フィルムを現像した。(解説は英語です)

「このような研究は見たことがありません」

 大気についてよりよく理解するために歴史的な出来事に関するデータを利用するという新しい研究方法は、科学コミュニティーから驚きをもって受け止められた。(参考記事:「すすけた鳥の標本で昔の大気汚染を測定、135年分」

「このような研究は見たことがありません」と、米アラスカ大学フェアバンクス校地球物理学研究所のクリストファー・フォールン氏は言う。フォールン氏は、電離層の性質や振る舞いを研究する高周波活性オーロラ調査プログラムの主任科学者であり、より洗練されたモデルができれば、空襲が電離層に影響を及ぼす仕組みを解明できるようになるだろうと言う。この研究は、難しい問題を解き明かそうとする興味深い取り組みだ。「電離層の科学について、これまでとは違った見方ができることを、私に教えてくれました」

 米国海洋大気庁(NOAA)国立気象局の宇宙天気予報センター(SWPC)に所属するミハイル・コドレスク氏は、電離層の「揺らぎ」や、その原因となる出来事をもっとよく理解できれば、無線通信やGPSシステムといった現代技術への影響もわかってくると説明する。ちなみにSWPCは、宇宙天気(地球周辺の宇宙環境の状態)の乱れを予報する機関である。(参考記事:「ずばり、宇宙天気予報とは」

【参考ギャラリー】息をのむほど美しいISSからの写真15選(写真クリックでギャラリーページへ)
インド洋東部の上空を飛んでいた2015年8月9日、ケリー氏は地球と国際宇宙ステーション(ISS)、天の川銀河を1コマに収めた。(PHOTOGRAPH BY SCOTT KELLY, NASA)

 宇宙天気は私たちの生活に重大な影響を及ぼす。例えば、2003年10月に激しい太陽嵐が発生したときには、電離層の乱れにより幅広い影響が出た。GPSの精度が低下し、航空機が飛行ルートを変更したほどだった。

 スコット氏は、もっと多くの記録を掘り起こして、大気変動の新しいモデルを構築したいと考えている。「個人的には、歴史的データのデジタル化への情熱が強まりました」と彼は言う。「本棚で埃をかぶっているデータはまだ大量に残っています」

文=Maya Wei-Haas/訳=三枝小夜子

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