人類の能力をはるかに超えた問題

 プレート運動が終わる日については、これまでにも様々な主張がなされている。2016年に発表されたある研究では、単純化した、非常に詳細なコンピューター・シミュレーションにより、プレート運動が終わるのは今から約50億年後と予測された。これは、太陽が死を迎える時期とほぼ同じだ。

 2008年の別の研究では、過去のプレート運動の証拠に基づき、プレートは間欠的に活動していると提唱された。そして、プレート運動が次に停止するのは約3億5000万年後だと予想し、太平洋が閉じて、多くの沈み込み帯が活動を停止するだろうとしている。

 スターン氏は、「プレート運動はいつか終わるものであり、それがいつやってくるのかというのはすばらしい問題提起です」と言う。しかしスターン氏は、今回の研究の推論には基本的に反対している。「プレート運動が終わる時期の予想は、どんなものも信じていません」

 米テキサス大学アーリントン校の名誉教授でプレートテクトニクスの専門家であるクリストファー・スコテーゼ氏は、今回の研究について、マントルの冷却ではなく、スラブの引っ張りを中心に考察するべきだったと言う。「プレート運動を支配するのはスラブの引っ張りだからです」

 スコテーゼ氏は、プレート運動は徐々に減速するのではなく、次の10億~20億年は活発になり、それから停止するだろうと予想する。マントル対流が弱くなると、スラブは非常に冷たく高密度になり、沈み込みが速くなるからだという。

 ハドノット氏は、未来の地球物理事象を予想することは、「現時点での人類の能力をはるかに超えている」と言う。それでも彼は、こうした研究は有益だと強調する。これらの論文はいずれも完全ではないものの、問題の複雑さと、私たちの知識と地球の実際の機構とのギャップを浮き彫りにするからだ。

 互いに大きく異なるモデルは、「そもそもなぜプレート運動があるのかという問題の理解に役立ちます」とスコテーゼ氏は言う。「私たちが未来について考えることは、過去にも当てはまるかもしれません」

【参考ギャラリー】まるで芸術、自然の神秘がつくった世界の奇岩怪石 写真16点(写真クリックでギャラリーページへ)
キラウエア火山の火口から流れ出た溶岩が、米ハワイ火山国立公園のひび割れた大地を覆ってゆく。火成岩のなかでも地表で冷え固まったものは、火山岩と呼ばれる。(PHOTOGRAPH BY FRANS LANTING)

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