【動画】ウミシダ、温暖化する未来の海の王者に

奇妙な姿の「生きた化石」、海が高温になっても生き残るのはなぜ?

2018.08.28
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【動画】スティーブンソン氏らの研究チームは、フィリピンでウミシダの生態系を研究している。ウミシダに寄生する小さな生物たちの独特な適応のしかたもテーマの1つだ。(解説は英語です)

 2億年前から生息しているとされる「生きた化石」ウミシダが、次の時代の浅瀬の王者になるかもしれない。世界の浅い海では、海水温の上昇によって多くのサンゴが死んでいるが、ウミシダはなんの問題もなく繁栄しているように見えるからだ。(参考記事:「【動画】白化するサンゴの断末魔、原因は温暖化」

 カナダ、ブリティッシュコロンビア大学のアンジェラ・スティーブンソン氏は、10年以上前からウミシダやウミユリなどのウミユリ綱の動物を研究している。現在は、フィリピンのネグロスオリエンタル州を拠点として、沖合のサンゴ礁に大量に生息するウミシダの観察や実験を行っている。(参考記事:「【動画】「生きた化石」ウミシダの泳ぐ姿が芸術的」

 彼らは8種のウミシダについて、寄生するエビやカニ、貝との関係や、ウミシダの腕が切れた場合の再生の速さなどを調べている。

無限に生えてくる腕

 そう。ウミシダの腕は再生する。水中にいるかぎり、無限に生えてくるように思われる。ある種のウミユリ綱の動物は150本もの腕を生やすことがある。スティーブンソン氏のウェブサイトによれば、切られた腕は1日1ミリにも満たないペースでゆっくり再生してくるという。

 ウミシダの最大の捕食者は魚類だが、それ以外の小さな動物も、ウミシダを宿主としながら、ときどきつまみ食いもしている。スティーブンソン氏によれば、ウミシダに寄生するエビや巻き貝などは、食物を探すことさえしない。宿主が細長い腕で集めた食物を消化し、排泄するのを待ち、その糞を食べている。

 ウミシダがこれほど繁栄していて、それが今後も続くように思われるのはなぜか? スティーブンソン氏は、ウミシダの腕の再生能力に理由があると言う。

「ウミシダの寿命はわかりませんが、私は、もしかすると不死なのではないかと思いはじめています。ほかの部分がどんなに傷ついても、中背板(中央にある円盤)さえ無事なら、元どおりの大きさに戻れるのです」

温暖化はむしろ好都合

 驚異の再生能力をもつウミシダは、海水温の上昇にもうまく対応しているようだ。(参考記事:「温暖化で「窒息」する海が世界的に拡大、深海でも」

「ある種のウミシダにとって、温暖化は有利にはたらきます」とスティーブンソン氏。彼女が研究室で水温を2℃上げる実験を行ったところ、腕の再生スピードが速くなったという。一方で、ウミシダの幼生を食べる生物は海水温の上昇によって打撃を受けるため、より多くのウミシダが成体まで成長できるようになると考えられる。

 現在、海は着実に温暖化している。米国海洋大気局(NOAA)が四半期ごとに発表している「気候の現状:世界の気候報告書」2018年1~3月分によると、世界の海洋に蓄積された熱量が1955年の測定開始以来最高を記録したという。この傾向が逆戻りする気配はない。(参考記事:「2017年の海水温は観測史上最高、研究発表」

 温暖化が進んでいく海を、ウミシダは陽気に泳ぎつづける。海水温の急上昇によりサンゴがどんどん死んでいっても、ウミシダにはなんの問題もないだろうとスティーブンソン氏は言う。

「サンゴの死はウミシダの個体数に影響を及ぼさないでしょう」と彼女は言う。「彼らに必要なのは、食物を運んでくれる海流と着生するための足場だけです。その足場はなんでもよく、サンゴである必要はないのです」

【ギャラリー】温暖化に負けない生きた化石、ウミシダ 写真5点(写真クリックでギャラリーページへ)
アンジェラ・スティーブンソン氏の研究チームは、フィリピンのネグロスオリエンタル州の海で8種のウミシダを研究している。これはそのうちの1種。(PHOTOGRAPH BY ANGELA STEVENSON)

文=Lori Cuthbert/訳=三枝小夜子

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