何が起きたのか?

 米デューク大学の集団遺伝学者エイミー・ゴールドバーグ氏は、「遺伝子の混入はあらゆるところで見られます。別々の種と考えられていた集団の間にさえ見られるのです」と言い、今回の研究は、現代ゲノム学の時代に、そうした交雑の証拠を見つけられなかった最初の事例の1つであると指摘する。

 彼女は今回の新しい分析が徹底的に行われていることを賞賛しつつ、実際にはフローレス原人の痕跡があるのだが今日の手法では検出できていない可能性もあると指摘する。しかし、小型化が2回にわたって起きた可能性も大いにあると言う。

 トゥッチ氏は、「島では多くの奇妙なことが起こります」と説明する。大陸と島では入手できる食物の量も違うし、捕食者の種類がまったく違っていたり、全然いなかったりすることもあるため、生物がまったく違った育ち方をすることがある。島の生物の多くは小型化する。「島嶼化(とうしょか)」と呼ばれる現象だ。マダガスカルの小型のカバや、かつてフローレス島で暮らしていた小型のゾウの仲間は、その例と考えられる。一方、フローレス島のネズミのように巨大化する動物もいる。このネズミは今でもフローレス島にいて、トゥッチ氏によると「うちのネコくらいの大きさ」だという。(参考記事:「世界最小の爬虫類、新種ミニカメレオン」

 オーストラリア、ウーロンゴン大学のゲリット・ファン・デン・ベルフ氏は、小型化の原因についてここで結論を出すべきではないと言う。ランパササ村の人々に島嶼化が起きたかどうかはわからないからだ。彼らは農業をするので、食料の不足(一般に島嶼化の原因とされている)が自然選択に重要な役割を及ぼしているとは考えにくい。

 米ブラウン大学のヒト集団遺伝学者ソーヒニ・ラマチャンドラン氏は、第三者の立場から、「この研究は、身長が複雑な要因によって決まることを示していると思います」と言い、このような低身長が進化してきた理由はまだわからないと補足する。「これらのサンプルをほかの研究に組み込んで身長の遺伝学を解明するためには、さらなる研究が必要です」(参考記事:「“ピグミー”の身体的特徴は遺伝子由来」

 研究チームは今、研究の結果をランパササ村の人々に伝えようと努力している。トゥッチ氏は、「結果を知らせることは、今回の研究の大事な役割の一つです」と言い、インドネシア人のイラストレーターと協力して、村人に説明するためのわかりやすい絵を製作中だ。やるべきことはまだまだある。彼らの研究は、疑問に答える以上に新たな疑問を投げかけたように見えるが、謎の多いフローレス原人の生と死について非常に興味深いヒントをくれた。(参考記事:「フローレス原人を絶滅させたのは現生人類だった?」

 グリーン氏は言う。「彼らはどんな人々だったのでしょう? 大きな謎が残っています」

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