温泉の「卵石」に閉じ込められた秘密に迫る

間欠泉で見つかる不思議な形の石には、地質的な歴史が刻まれているかもしれない

2018.08.06
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複雑な詳細

 卵の断面には、密度と組成を異にする同心円状の輪があった。「私たちはおそらく、間欠泉の熱水の化学組成の経時変化を見ているのです」とフォーリー氏は言う。リン氏は、間欠泉の卵が成長する際に、化学組成の変化が「リアルタイムに記録」されているのだと説明する。また、密度の変化は季節ごとの降雪量とその期間といった周期的な変化を反映しているのかもしれないと言う。

 しかし、これらの変化から、オールド・フェイスフル間欠泉について何がわかるのだろうか? 答えは複雑だ。(参考記事:「イエローストーンの間欠泉 噴出が止まる可能性も」

 この間欠泉の水は、地下にあるティーポット型の巨大な空洞にたまってから周期的に噴出するが、その前に網目のように広がる地下の裂け目を通ってくる。その途中、沸き立つ熱水は(温度は175℃以上に達する)周囲の鉱物を溶かし、化学的性質を変化させる。

 時間とともに熱水の成分がどのように変化するかを知るのは困難だ、とジョーンズ氏は言う。「熱水を追跡するのは非常に難しいのです」

微生物が先か、卵が先か?

 間欠泉の卵の形成過程は、基本的に飴玉を作る工程に似ている。飴玉を作るには、砂糖水を高温に熱する必要がある。温度が高い方が多くの砂糖が溶けるからだ。溶液が冷えてくると、砂糖が結晶化しはじめる。

 一方、熱水だまりでは、近くの間欠泉が噴出するたびに、鉱物を豊富に含む熱水が定期的に供給される。熱水が冷えてくると、鉱物がゆっくり沈澱してきて、そこにあるものに付着する。ときにそれが卵の形になるのだ。しかし、熱水だまりには微生物も生息しており、その微生物が卵を大きくしている可能性もある。(参考記事:「マリアナに新たな熱水噴出孔と深海生態系を発見」

【動画】必見、イエローストーンの5大アトラクション:イエローストーン国立公園は巨大な休火山の上にあり、世界の間欠泉の半数がある。高さ90メートルの滝から熱水を吹き出す巨大な間欠泉まで、この公園の5大アトラクションを紹介しよう。(解説は英語です)

 卵が形成されるスピードはまだわからない。ジョーンズ氏は、間欠泉の卵の層は、木の年輪のように毎年形成されるものではないだろうと言う。彼は2001年に、ニュージーランドの間欠泉に落ちた花粉のまわりに形成された卵の分析を行ったが、卵の層は1年に約0.35ミリ成長していた。ただ、この数字がほかの地域の間欠泉の卵にもあてはまるかどうかは不明である。

 今回の調査では1個のサンプルしか調べられなかったため、最終的な結論を引き出すことは難しい。「1つしか入手できなかった場合、それが典型的かどうかわからないからです」とジョーンズ氏は言うが、「もちろん、これは研究チームの落ち度ではありません。1個入手できただけでも立派なものです」とフォローする。

「この場所に入り、間欠泉の卵を採取できただけでも幸運でした」とリン氏は言う。今回の研究は、オールド・フェイスフル間欠泉の保全に役立つことが期待されるだけでなく、間欠泉の卵の秘密にもう一歩迫ることを可能にしたのだ。

【ギャラリー】まるで芸術、自然の神秘がつくった世界の奇岩怪石 写真16点(写真クリックでギャラリーページへ)
イタリアのエトナ山。夜の噴火では火成岩が生まれるところが鮮やかに見える。火成岩とはマグマが冷え固まってできた岩石のこと(地表に到達したマグマは溶岩と呼ばれる)。ちなみに、「igneous(火成岩)」の語源はラテン語の「ignis(火)」である。(PHOTOGRAPH BY CARSTEN PETER)

文=Maya Wei-Haas/訳=三枝小夜子

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