【動画】潜入!トラ闇取引の現場、解体して販売

ベトナムに違法の飼育施設、秘密捜査員が見た恐るべき実態

2018.08.01
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【ギャラリー】「トラ牧場」が支えるトラの違法取引、写真7点
トラの生体や体の部位の違法取引に関わっているとされるタイの飼育施設は、その多くが表向きは娯楽・観光施設を装っている。そうした施設のひとつであるタイガー・テンプルは、2016年に強制捜査を受けて閉鎖された。同施設の所有者は現在、動物園の開園を計画している。(PHOTOGRAPH BY STEVE WINTER,NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

トラの輸入

 トラを飼っていたベトナムの家の妹はWJCの捜査員に対し、自分たちは需要に応えるためにラオスからトラを輸入することもあると言ったという。ベトナムの西側に位置するラオスもまた、トラの繁殖と違法取引が盛んなため、WJCが捜査員を送り込んでいる。

 彼らが捜査に入った施設のひとつが、悪名高いトラ牧場「ムアン・トン」で、ここは何年も前から国境を越えた取引に関わっている。2009年、ムアン・トンの支配人は同国の雑誌『Target』に対し、「外国の業者が牧場にトラを見にやってきたが、輸出するにはトラが小さすぎると言って買わなかった」と語っている。(参考記事:「世界最大のサイ牧場の「すばらしい写真」」

 同誌はまた、ムアン・トンとラオスの企業ビナサコーン社との関連を指摘している。ビナサコーン社は、2016年に英ガーディアン紙によって、政府の認可を得て保護指定の野生動物を大量に輸出している数少ない企業のうちのひとつと報じられた。CITES事務局は2016年に「ビナサコーン・トラ牧場」を訪問したことを報告しており、またナショナル ジオグラフィックが牧場の代表に問い合わせたところ、この施設は別名ムアン・トンと呼ばれていることが確認できた。

 WJCの捜査員に話をしたムアン・トンの支配人によると、トラは注文に応じて殺しているという。トラの購入を希望する人(その大半がベトナム人だ)は、牧場主と交渉して施設を訪れ、トラを選ぶ。トラは通常、注射によって殺される。その後、買い手が自ら連れてきた解体業者が処理を行う。

ギャラリー:「トラ牧場」が支えるトラの違法取引、写真7点
NPO団体「Education for Nature - Vietnam」の捜査員が2016年に撮影した、殺風景な囲いの中に閉じ込められたトラ。(PHOTOGRAPH COURTESY EDUCATION FOR NATURE - VIETNAM)

 また、ベトナム人姉妹のひとりは捜査員に、アフリカから子トラを輸入することがあるとも語っている。南アフリカのNGOによる最近の報告では、同国にはトラの飼育施設が少なくとも56カ所あるという。CITESのデータによると、2010年以降、南アフリカからベトナムへ50頭を超えるトラが輸入されている。南アフリカからはまた、ライオンの骨が東南アジアへ輸出されており、クリシュナサミー氏ら専門家は、それらがトラの骨として違法取引されていると考えている。2008年から2015年にかけて南アフリカから輸出されたライオンの骨の98%は、ベトナムかラオスに送られている。ラオスの輸入業者のひとつが、先述のビナサコーン社だ。(参考記事:「トラ減少で希少なウンピョウが新たな標的に?」

政府の約束

 今年5月、ラオスのトーンルン・シースリット首相は、新たな野生動物牧場の開業を禁ずる命令を出し、既存のものは動物園やサファリパークに作り変えるよう促した。これは、2016年に行われたCITESの会合において、ラオス政府はトラ牧場産業を閉鎖する方策の検討を始める予定だとした公約を実現しようとするものだ。

「この命令に関して大いに懸念されるのは、(既知の6カ所の)牧場はすべて違法取引に手を染めているにもかかわらず、その所有者たちが起訴されないままになるだろうということです」と、EIAのデビー・バンクス氏は言う。「また、これによって、観光客にはトラと遊ばせ、繁殖は速いペースで続けられ、裏で違法取引に関わる施設が幾つもあるといったタイの轍を踏むような状況になれば、ラオスでも似たような違法取引と繁殖が続けられる可能性は高いでしょう」(参考記事:「解説:トラ寺院に動物園の認可、トラたちの未来は」

 ムアン・トンはすでに二つに分裂しており、そのうちの一方はトラを利用した娯楽施設を設立しようとしている。

ギャラリー:「トラ牧場」が支えるトラの違法取引、写真7点
タイの動物保護区で自動撮影カメラが撮影したトラ。ベトナムとラオスでは、野生のトラは実質上絶滅している。(PHOTOGRAPH BY STEVE WINTER, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

 ベトナムは今年、トラの所有を犯罪とし、トラなどの絶滅の危機にある種の輸送、売買、違法取引の最高刑を引き上げた。それでも、ベトナムでは今でも多くの動物園がトラを所有して繁殖させる認可を得ており、この先も供給が途絶えることはないだろうとヘンドリー氏は言う。

 ベトナムにはトラの違法取引を取り締まるだけの十分な法律があるものの、限られた財源、組織犯罪と戦う専門家の不足、さらには腐敗などから、十分な強制力を発揮できていない。

 障害はほかにもある。「経験から言って、ベトナムのトラの所有者や取引業者は、中国人の買い手に比べてベトナム人の買い手を信用しない傾向にあり、同国の警察が秘密捜査員を送り込みにくい状況にあります」とWJCの捜査責任者は言う。中国人が警察の秘密捜査員になることは考えにくいからだ。だからこそ、WJCは常に情報を法執行機関と共有し、ときには先方に秘密捜査員を「貸す」こともある。

「彼らがやっていることは、(この村の)誰もが知っています」と、あのベトナムの家を訪ねた捜査員は言う。それでも、トラの取引は今も続けられている。

文=RACHAEL BALE/訳=北村京子

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