動物たちの描写あふれる、人々の危機感が希薄に?

私たちは1日当たり4頭以上の「仮想」ライオンに会っている

2018.07.30
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動物で稼いだら、動物に還元すべき

「バーチャル集団」の概念は興味深いが、今回の研究により、動物のイメージの氾濫と、野生動物に関する人々の誤解との間に因果関係が立証されたわけではないことに注意しなければならない。ただ、さらなる研究の対象として有望な領域であることは確かだ。

 論文の著者らは、野生動物のイメージを利用して利益をあげた企業が、利益の一部を野生動物の保全の取り組みや啓蒙キャンペーンにあてることを推奨する。(参考記事:「大手旅行サイト、動物アトラクションの販売を中止」

 クルシャン氏は言う。「それはフェアであるだけでなく、企業にも野生動物にも恩恵をもたらすはずです」

 例えば、企業にとってはポジティブなPRになるだろう。それに、企業のマスコットが絶滅してしまったら、マーケティングの観点からは痛手になるはずだ。

 クルシャン氏は、一部の企業はこのことをよくわかっているとして、ジャガーとラコステの保全活動を例に挙げる。しかし、「自分たちが利用する動物の保全を心から気にかけている」企業の数は十分ではないと指摘する。

「広告の約20%に動物のイメージが使われています」

 野生動物を広告に利用する企業が動物の保全資金を提供するという考え方は、すでに受け入れられはじめている。

 国連開発計画(UNDP)は6月に、広告に動物を使う企業に対し、その動物と生息地を保全するための寄付を呼びかける「ライオンズ・シェア」基金の立ち上げを宣言した。

 ライオンズ・シェアのアンバサダーに就任した動物学者デヴィッド・アッテンボロー氏は、キャンペーンの告知動画の中で、「私たちが目にする広告の約20%に動物のイメージが使われています。それにもかかわらず、動物たちは受けるべき支援を受けていません。これからは、違います」と言う。

 基金を主催するUNDPは、今後3年間で毎年1億ドルずつの調達をめざしている。その資金は国連や市民団体が実施する自然保護・動物福祉プログラムに分配される。

 クルシャン氏はこのイニシアチブについて「ワクワクするニュース」だと言う。「私たちが推奨するのは、まさにそれです。この取り組みはまだ始まったばかりです」(参考記事:「「写真の箱舟」建造中!」

【ギャラリー】カリスマ動物 上位20種(写真クリックでギャラリーページへ)
タンザニアのセレンゲティ国立公園の岩山でくつろぐ雌ライオンたちの姿を遠隔操作カメラがとらえた。(PHOTOGRAPH BY MICHAEL NICHOLS, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)

文=Cecelia Smith-Schoenwalder/訳=三枝小夜子

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