210万年前の石器を中国で発見、アフリカ以外最古

初期の人類史を書き換える大発見、製作者は不明

2018.07.13
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 石器の製作時期を特定するため、朱氏のチームは石器が見つかった地層の磁気を測定した。

 地層が形成されるとき、土の中に含まれる鉱物には、そのときの地磁気の向きが記録される。地磁気はときどき逆転するため、ほかの地域の地磁気の変化の記録と比較することで、その地層の年代を特定できるのだ。

 朱氏は、上陳遺跡の堆積物を、年代がよくわかっているアフリカの土と比較することで、各層の年代を正確に特定した。論文で検証された96個の石器のうちの6個が発見された地層は、212万年前のものであることが明らかになった。

中国陝西省の上陳遺跡。最も古い石器が発見された山腹の発掘現場。中国科学院の地質学者である朱照宇氏らは、この遺跡を13年にわたり発掘した。(PHOTOGRAPH BY ZHAOYU ZHU)
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石器を作ったのは誰?

 上陳遺跡では石器と一緒に発掘されたヒト族の化石はないため、誰がその石器を作ったのかはわからない。

 ドマニシ遺跡の石器を作ったホモ・エレクトスが、上陳遺跡の石器も作った可能性はある。彼らは石器を製作し、大陸を横断するのに必要な体格と歩行能力を備えていた。しかし、これまでに見つかっているホモ・エレクトスの最古の化石は180万年前のもので、上陳遺跡の最古の石器よりかなり新しい。(参考記事:「ヒトはなぜ人間に進化した? 12の仮説とその変遷」

「この時代の中国にホモ・エレクトスが住んでいた可能性は大いにあります。けれども、遺跡の年代と、さらに古い時代の石器が発見される可能性を考えると、ホモ・エレクトスより古い化石人類、例えばホモ・ハビリスなどがアジアに広く分布していた可能性も考えられます」と、ドイツ、マックス・プランク進化人類学研究所の古人類学者で、古代アジアの道具を研究しているマイケル・ペトラグリア氏は言う。(参考記事:「人類最古の右利きの証拠を発見、180万年前」

 スペインの人類進化国立研究センター(CENIEH)所長で、アジアのヒト族化石の世界的権威であるマリア・マルティノン=トレス氏は、これまでホモ・エレクトスに分類されてきた中国のヒト族化石の一部についても再考するべきだと指摘する。

「ホモ・エレクトスという言葉は包括的に用いられる傾向があり、アジアで発見されたヒト族の化石がすべてホモ・エレクトスに分類できるわけではないことを認めなければなりません。アジアの最初のヒト族をめぐる問題はまだ解決していないと思います」

 上陳遺跡の石器を製作したヒト族の正体が何であろうと、その脳は現生人類の3分の1程度しかなかったはずだ。脳の大きさがすべてではないが、専門家は、これほど初期の、小さな脳しかもたないヒト族が、200万年も前にアフリカから中国まで広まったことに驚いている。(参考記事:「ネアンデルタール人はゆっくり成長した、研究成果」

 謎のヒト族の正体は、今後の研究によって明らかになるだろう。デネル氏は、210万年前のものよりもさらに古い堆積物を調べてみたいと言う。上陳村では、この時代の堆積物は農場の下にあり、発掘できなかったからだ。アジアのどこかで、今後、さらに驚異的な発見があることは確実だ。

「科学界は長年、人類の進化に関してアフリカの役割ばかりに注目し、アジアは二の次になっていました」とマルティノン=トレス氏は言う。「アジアでの発掘調査が進むにつれ、より多くのサプライズがあるでしょう」(参考記事:「1千万年前の歯化石、「人類の起源」は言い過ぎ」

【参考ギャラリー:思わずゾクゾクする考古学フォト13点】(写真クリックでギャラリーページへ)
ラ・ベンタの石頭
1947年のナショジオの写真。メキシコのラ・ベンタでオルメカ文明の巨大な石頭を調査する考古学者たちをとらえている。オルメカ文明はメソアメリカ最初の文明であり、一帯の発展に関する貴重な手がかりの宝庫だ。(PHOTOGRAPH BY RICHARD HEWITT STEWART, NATIONAL GEOGRAPHIC)

文=Michael Greshko/訳=三枝小夜子

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