大急ぎでお母さんグマのところへ駆け戻る好奇心旺盛な子グマ。雪の中をひっそりと歩くシカ。低木のそばでおしっこをするイタリアオオカミ。365日間連続で撮影されたこの動画には、動物たちが森の中で見せる素顔が満載だ。
写真家のブルーノ・ダミーチス氏とウンベルト・エスポジート氏は、イタリアのアブルッツォ・ラーツィオ・エ・モリーゼ国立公園に生える1本のブナの木にビデオカメラを向け、2016年6月から2017年5月までの1年間、同じ場所で撮影を続けた。(参考記事:「イタリア アルプス 極上の自然」)
カメラに記録された四季の中では、クマ、オオカミ、アナグマ、シカ、イノシシなど、さまざまな動物たちが木のそばを通り過ぎていく。ただ黙々と歩いてゆくものもいれば、立ち止まってにおいを嗅ぐもの、木に背中をこすりつけるものもいる。(参考記事:「【動画】ヘラジカの角が頭を振っただけでポロリ」)
ダミーチス氏によると、今回のプロジェクトのために選んだ「こすり木」(クマが縄張りを主張するために背中をこすりつける木)は「特別」なもので、「すばらしい野生動物たち」が残していくにおい、合図、メッセージの交差点として機能しているのだという。
今回撮影した動画におけるいちばんの収穫は、何と言っても、絶滅の危機にあるマルシカヒグマだったとダミーチス氏は言う。ヒグマの亜種で、近絶滅種に指定されているマルシカヒグマは、アブルッツォ国立公園とその周辺にしか生息しない。(参考記事:「【動画】子グマ2頭を乗せて泳ぐ母グマ、貴重映像」)
ダミーチス氏とエスポジート氏は、この動画を撮影することで「一般の人が普段は目にすることができない」動物の姿をとらえたかったと語る。(参考記事:「幻のジャングル犬の親子を撮影、おそらく初」、「【動画】謎多き野生ネコ、中国の森で撮影に成功」)
ダミーチス氏は言う。「多くの人にこうしたかけがえのない森の重要性が理解され、イタリアのような人口が多い国にも、保護すべき自然はまだたくさんあるのだと知ってもらえればうれしいです」(参考記事:「野生絶滅から1世紀、欧州のバイソン再野生化へ」、「伊アルプスのヤギ、温暖化で小型に」)