地球の最低気温を更新、-94℃、南極の高地

「ほとんど別の惑星」と科学者、衛星からの観測データを解析

2018.06.29
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宇宙観測にも最適

 これほどの超低温になるのは、非常に特殊な条件がそろったときだけだ。まず真冬で、その季節に最後に太陽が沈んでからかなりの時間が経過している必要がある。さらに、数日間にわたって空気が大きく動くことなく、氷床の上に雲やダイヤモンドダストがない完璧な晴天でなければならない。

 人間からすれば、氷は冷たいものではあるが、実際には微量の熱を放射している。通常、その熱のほとんどは大気中の水蒸気に吸収され、また地表に戻されるので、熱は大気の下層に閉じこめられることになる。

【参考動画】南極を目指す:オーストラリア人探検家のキャスとジョンジーが、海岸から南極点まで、猛吹雪の中を単独での徒歩による往復に挑む。(解説は英語です)

 しかし、南極の乾期の大気に、水蒸気はほとんど含まれない。それをスカンボス氏は、「通常、地球上の他の場所では開くことのない窓が開き始めます」と表現する。すると、地表から発せられるわずかな熱がはるか上空にまで逃げるようになるので、表面温度はさらに低くなる。

 このような極寒状態を作り出す晴天は、宇宙観測にも理想的だ。そのため、スカンボス氏のチームが示した超低温地点から数キロしか離れていない場所にも、望遠鏡が設置されている。

 高仰角南極テラヘルツ望遠鏡(High Elevation Antarctic Terahertz Telescope、皮肉なことに「熱」という意味のHEATと略される)を運営している米アリゾナ大学の天文学者クレイグ・クレサ氏は、「水蒸気は最大の敵なのです」と言う。「私たちは、この超乾燥地帯に望遠鏡を設置しました。しかし、十数キロ先の方がもっとよかったのでしょうか?」

 HEATのある一帯はすでに最適の場所といえるものの、気候変動を考えれば、その十数キロも検討に値するかもしれない。温暖化により、大気中に凝縮された水蒸気の量は増加しているので、氷が発する熱は地表近くにより閉じこめられやすく、地表は温まり続けることになる。つまり、宇宙観測に最適な澄み渡った空が見られる回数が減るということだ。地球表面の最低温度の観測記録を破りたいと考えている科学者にとっても、もう時間切れなのかもしれない。(参考記事:「巨大氷山が分離、ナショジオの地図で見る南極の変化」

「温室効果ガスや凝縮された水蒸気が増えるにつれて、南極は3〜4℃ほど暖まると考えられています」とターナー氏は話す。「低温記録を更新できる機会はますます減っていくでしょう。その可能性は小さくなる一方です」(参考記事:「南極の海の氷に大穴、大きさは北海道に匹敵」

ギャラリー:南極の氷の下、水深70mの海で驚異の光景を見た 写真12点
ギャラリー:南極の氷の下、水深70mの海で驚異の光景を見た 写真12点
南極の冷たい海の下には、多様な海生無脊椎動物も生息している。(PHOTOGRAPH BY LAURENT BALLESTA)

文=Alejandra Borunda/訳=鈴木和博

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