公海で行われることの多いマグロ漁に従事する漁船。 (PHOTOGRAPH BY PAUL NICKLEN, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
[画像をタップでギャラリー表示]

こうして実態を解明した

 排他的経済水域の外、一般には沿岸から200海里以上離れた海洋は、公海と呼ばれ、どの国の漁船も自由に操業できる。国連食糧農業機関(FAO)は公海での行動規範を定めているが、規制は最小限で、取り締まりは不十分だ。

 その上、公海で操業する漁船の間には利害の競合があることが多いため、活動に関する詳細な情報を提供したがらない。

 公海は、地球上で最もアクセスしにくい場所の1つだ。論文の共著者で海洋データ科学者のフアン・マジョルガ氏は、公海漁業に関するデータを収集するために、世界中の漁業活動を監視する「グローバル・フィッシング・ウォッチ」を利用した。このプログラムでは、船舶への搭載が義務づけられているAIS(船舶自動識別装置)からの信号を人工衛星で受信し、その信号を利用して宇宙から漁船を追跡している。マジョルガ氏は今年、このデータを利用して、地球の3分の1の海域で産業的漁業が行われていることを明らかにした。(参考記事:「衛星で漁船を追跡、なんと海面の55%超で漁業が」

「最初にこのアイデアを思いついたときには、公海漁業の実態はよくわかっていませんでした」とマジョルガ氏は言う。それからの2年間で、同氏は公海で何隻の漁船がどのくらいの頻度で操業しているかを突き止めた。ただし、AISを搭載していない漁船や、意図的にAISをオフにしている漁船もあるため、このデータですべての公海漁業を把握できたわけではないという。(参考記事:「【動画】拿捕の中国船にサメ数千匹、ガラパゴス」

 船舶のデータを入手したマジョルガ氏は、漁船の大きさ、位置、移動距離、速度に基づいて燃料費を見積もった。漁船の種類や、どの魚を獲っているかもわかるので、必要な労働力も見積もることができた。さらに、最低賃金法や典型的な労働コストに関する既知の情報を参照して、人件費も見積もった。

 しかしながら、人件費に関する見積もりは、今回の研究で最も不確実な部分だという。複数の非政府組織からの報告で、水産業には搾取的な労働慣行があり、一部の地域では、奴隷労働か、それに近い状況になっていることがわかっているからだ。

「私たちの分析を不確実なものにしているのは労働です」

 マジョルガ氏は、それぞれの漁船の操業コストに幅をもたせた上で、その漁獲量を見積もった。論文著者らは、漁獲高が過少申告されている事例もあるのではないかと考えている。

次ページ:地球上で最も破壊的な漁法

おすすめ関連書籍

unknown(未知の海)

初版限定ポストカード付き絵画のような水中の絶景を、世界中から集めた写真集

定価:本体3,200円+税