「史上最大」のネズミ根絶プロジェクトが成功

島の在来種を脅かす外来種のネズミの駆除で、固有種が回復

2018.05.12
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ギャラリー:史上最大規模の外来ネズミ根絶プロジェクトに成功 写真8点(写真クリックでギャラリーページへ)
サウスジョージア島の絶滅危惧種を脅かす外来種のネズミを駆除するため、ネズミの餌が入った容器に毒を混ぜる作業員。(PHOTOGRAPHY BY TONY MARTIN, SOUTH GEORGIA HERITAGE TRUST)

史上最大の駆除作戦

 これまで、ネズミが根絶された島としては、オーストラリアのマッコーリー島が最大だったが、今回のサウスジョージア島はその8倍の10万ヘクタール以上ある。この島は縦横に広がる氷河によって分断されたいくつかの地区がそれぞれ孤立しているため、駆除チームは段階的に毒餌を投下することができた。1つの地区のネズミを駆除できれば、ほかの地区からネズミが移動してくる可能性はなかった。(参考記事:「全米最長のネコよけフェンス、ハワイ島に完成」

 なお、南極探検家のアーネスト・シャクルトンは、1916年に氷河に隔てられた島内を移動している。彼が乗船していたエンデュアランス号がウェッデル海の流氷に閉じ込められて難破した際、5人の仲間とともに救命ボートで脱出。サウスジョージア島の氷河を横断したのだ。今日、シャクルトンがたどった道は「シャクルトン・ギャップ」と呼ばれている。

 デジタル地図作成の専門家デヴィッド・ウィル氏は、世界中の島の固有種を守るために外来種を駆除する活動をしているNPO団体の「アイランド・コンサべーション」からの出向者として2012~2013年の駆除を手伝った。ウィル氏は、「私が携わった中でも最大規模のプロジェクでした」と振り返る。

 ウィル氏は、島内でネズミがいる可能性のあるすべての場所に確実に毒餌を撒けるよう、毒餌の散布状況を更新していける地図を作った。ネズミは繁殖力が高いため、少しでも見落としがあると、すぐに繁殖して広まってしまうからだ。ウィル氏は、見るものを魅了するシャクルトン・ギャップの上空を飛んだこともあるが、よりワクワクしたのは、浜辺にうちあげられたケルプの周りでサウスジョージアタヒバリが跳ね回っているのを目にしたときだったという。(参考記事:「特集「生命よみがえるフォークランド諸島」撮影の裏側 写真15点」

 ウィル氏がサウスジョージア島滞在中に見たタヒバリは、その1羽だけだった。しかし、ネズミの根絶以来、タヒバリの卵やヒナが危険にさらされなくなったことで、その個体数は爆発的に増加している。最近、リチャードソン氏は現地から最新情報を受け取った。「私たちのスタッフの1人がサウスジョージア島の浜辺に行ったところ、タヒバリの鳴き声でゾウアザラシが唸ったり吠えたりするのが聞こえないほどだったそうです」

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ネズミの餌が入った容器を運ぶヘリコプター。後ろに見えるのは駆除チームの作業員が滞在しているキャンプだ。(PHOTOGRAPHY BY TONY MARTIN, SOUTH GEORGIA HERITAGE TRUST)

駆除は人間の責任

 タヒバリの個体数を取り戻すために多くのネズミが駆除された。リチャードソン氏は、道徳的な矛盾はないと言う。「私たち人間が、本来ネズミがいるはずのない場所にネズミを持ち込んだのです。だから、ネズミを駆除する義務を負っているのも人間です」(参考記事:「外来種の駆除を保全の目的にしてはならない理由」

 ネズミを再び持ち込まないようにするため、島では厳しいバイオセキュリティー措置が実施されている。観光船は沖合に停泊させ、観光客はネズミが隠れることができない小さな船で島まで移動するようになっている。

 保全活動家は、年々、より大きな島でネズミを根絶できるようになっている。今回のサウスジョージア島での成功は、大規模で野心的なプロジェクトが実現可能であるという「自信」を与えた、とウィル氏は言う。

 現在、ネズミの駆除が検討されている島には、アホウドリを食い荒らす巨大ネズミが問題になっている南大西洋の英領ゴフ島や、100人以上の住民の存在が問題を複雑にしているガラパゴスのフロレアナ島がある。またニュージーランドは、2050年までにネズミ、オーストラリア原産のポッサム、オコジョを国土全体から駆除すると宣言している。(参考記事:「ニュージーランド、2050年までに外来種を根絶へ」

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【ギャラリー:南極の氷の下、水深70mの海で驚異の光景を見た 写真12点】

文=Emma Marris/訳=三枝小夜子

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