「青空は年に数日」 中国・大気汚染と闘う街

重工業の都市、唐山で国の取り組みと人々の思いを取材した

2017.05.10
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驚くべき情報の透明性

 中国の環境汚染との闘いにおいて特に注目すべき点は、政府がいつもの警戒的な態度を捨て、かつてないほどの透明性を見せていることだろう。

 政府は驚異的なスピードで、PM2.5のレベルを観測するモニターの全国的なネットワークを構築した。(参考記事:「インドで最悪級の大気汚染、PM2.5基準の16倍」

 さらに驚くべきことに、モニターの観測データは一般に公開されている。中国でスマートフォンを持っている人なら誰でも、地元の大気の質をリアルタイムでチェックしたり、特定の施設が排出制限に違反しているかどうかを確認したり、ソーシャルメディアを通じて地元の執行機関に違反行為を報告したりできる。情報公開のレベルは、米国のそれと比べても遜色がない。

 こうした流れは、中国の国民と政府の関係性に真の変化をもたらすと語るのは、政府のデータを利用するアプリを作成した環境NGO「公衆環境研究センター」のリーダー、マー・ジュン氏だ。

「ここには、従来とは違ったやり方を試すチャンスがあります。いわば従来とは違う統治のしかたが試されているわけです。これはとても貴重な機会です」

 当然ながら、中国は今も一党独裁統治の国だ。北京にいる指導者たちが、地方の業績を判断する。しかし判断基準が改められたことによって、人々の姿勢も変わってきているとシェ氏は言う。旧制度においては、地方の役人はほぼ経済的な繁栄だけを基準に評価を受けてきたが、現在では大気の質を中心とした環境問題に重点が置かれるようになっている。

 上からの評価が政治キャリアに影響するトップダウンの支配体制の中で働く官僚たちも、この変化に注目している。大気の質を改善できなかった市長は、環境保護部に呼び出され、さらなる努力をせよと警告を受けることもある。

 一方で、まともな対策を取らず、表面を取り繕ってすまそうとするケースもある。たとえば、国際会議などの注目度の高いイベントの前にだけ、一時的に工場を閉鎖するよう命じるわけだ。11月と12月の数週間だけ工場を閉めて、市が年間の排出基準を超過しないようにすることもある。

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