「青空は年に数日」 中国・大気汚染と闘う街

重工業の都市、唐山で国の取り組みと人々の思いを取材した

2017.05.10
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唐山市の大気は製鉄所の排気などで汚染されているが、政府は大気浄化への取り組みを強化するよう指導している。(PHOTOGRAPH BY NICOLA LONGOBARDI, THE NEW YORK TIMES, REDUX)
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改革の時

 中国は今、過去数十年間の急激な工業化によって損なわれた環境と健康を回復しようという大規模な取り組みを行っている。大気汚染との闘いはその一環だ。経済成長は、何百万人もの国民を貧困から救い、唐山を震災後の廃墟から立ち直らせた。しかしその一方で、多くの人々が水質汚染、食料汚染、大気汚染に苦しめられることになった。(参考記事:「中国、大気汚染で8歳の少女が肺癌に」

 政府に対して大気汚染に関するアドバイスを行っている中国清潔空気連盟の事務局長トニー・シェ氏によると、中国当局は現在、大気の質の改善に「極めて真剣に」取り組んでいる。(参考記事:「中国CO2削減の意気込み、衛星写真で見えた」

 政府による取り組みは多岐にわたる。中国の各都市は、市民に自宅での石炭ストーブやかまどの使用をやめるよう指導している。役所の指示により、車に使われるガソリンやディーゼル油の質の向上も進められている。2020年に発効される車の排出基準は、欧米のそれと同等のものとなるだろう。

 しかし、取り組みの焦点となっているのは重工業だ。今年3月、政府は103カ所の石炭火力発電所の閉鎖および計画中止を発表した。鉄鋼の生産能力も、さらに5000万トン分削減するという。(参考記事:「温暖化対策の主導権が中国へ?トランプ大統領令で」

 政府を動かす力となったのは、大気汚染に対する国民の怒りだ。最初の削減策の効果が現れはじめた2014年と2015年には、北京周辺の微粒子汚染のレベルは25%低下した。しかし2016年末から2017年初頭にかけて、数値は再び急上昇に転じた。これについては、グリーンピースが以下のように分析している。生産能力の削減を行ったにも関わらず、2016年の鉄鋼の生産量は増加しており、その原因は中央政府が需要を刺激し、地方の役人が地元の工場を保護したことであった。(参考記事:「脱石炭を図る中国政府、変われない地方の製鉄所」

 環境汚染に対する国民の抗議の声は、中央政府が大なたを振るう上で都合の良い口実となっている。そもそも鉄鋼やセメント、ガラス、発電といった部門における過剰な生産能力は、経済を揺るがしかねない時限爆弾だ。政府もいずれこれに対処しなければならないことはよくわかっている。

 しかし重工業は雇用を提供し、有力な国有企業に独占されていることから、「手をつけるのが非常に難しい部門」だと、ロンドンを拠点に環境問題を扱うウェブサイト『チャイナダイアログ(Chinadialogue)』の北京編集主幹、マ・ティアンジー氏は言う。「大気の質に関して、都市部の中産階級から抗議の声が上がることで、政府はかねてより実施の機会を狙っていた困難な改革を推し進めるための、正当な理由を得ることができたのです」

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