当局発表:ツタンカーメンの隠し部屋はなかった

論争を呼んだ「隠し部屋」問題、入念なレーダー調査でついに決着か

2018.05.08
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【参考動画】古代エジプト入門:ピラミッド、ファラオ、ミイラ、そして墳墓で有名な古代エジプト文明は、数千年にわたって栄えた。彼らが後世の人々に与えた最大の影響とは何だろうか?(解説は英語です)

3チームが3つの周波数で調査

 今回の報告書には、2018年2月に新たに実施された3回のスキャンの結果が含まれている。スキャンは3つの独立したチームが、それぞれ異なる周波数(高、中、低)を用いて行った。高周波のレーダーでは、約2メートルの深さまでの詳細な結果を得ることができる。一方、低周波ではより深くまで調べられるが、解像度が粗くなる。

 共同研究チームは7日間にわたって調査を行い、表面を走査した距離にして約2.5キロメートル分のデータを収集した。

 複数の専門家が、レーダーのデータを個別に解析した後、全員でそれぞれの結果のクロスチェックを行った。

「わかったのは、玄室の壁から4メートル奥までに、入口や空間が存在する証拠はないということです」とポルチェリ氏はナショナル ジオグラフィックに語った。

「残念ながら、これが結果です。私たちの確定的な見解です」

ゴースト信号

 以前行われたレーダースキャンでファラオの玄室において異質なものが検出されたことから、奥にネフェルティティの墓が隠されているのではないかという期待が高まったわけだが、その原因をポルチェリ氏は「ゴースト信号」、すなわち、壁の奥ではなく表面で起こる、まぎらわしいレーダー反射だったと考えている。(参考記事:「ネフェルティティの墓に考古学者が期待する理由」

 通常の状態では、GPRが発射した電波は壁を通り抜け、真っすぐに跳ね返ってきた波を受信するため、信号はクリアになる。

 しかしツタンカーメンの墓では、どこかの部分で電波が壁を貫通せず、壁の表面など別の経路をたどって受信機に戻ったためゴースト信号がとらえられたと見られる。

ギャラリー:ツタンカーメン黄金の財宝 写真20点(画像クリックでギャラリーページへ)
PHOTOGRAPH BY KENNETH GARRETT, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE

 その原因として研究者らが考えているのは、石灰岩の壁に塗られた漆喰に、電気を通す性質があるのではないかということだ。

「石灰岩自体にも、この現象を生じさせる性質があるかもしれません」とポルチェリ氏は説明する。

 そのほか、巨大な珪岩でできたツタンカーメンの石棺によるゴースト信号もあったかもしれないと、研究者らは考えている。(参考記事:「ギャラリー:ツタンカーメン黄金の財宝 写真20点」

技術の有効性を証明

 最新のレーダースキャンの結果は、調査を始めるきっかけとなった「隠されたネフェルティティの墓」という当初の仮説を立証するものにはならなかったが、ポルチェリ氏は、このプロジェクトによって、GPRが最終的な答えを出せることが示されたと考える。世界中の遺跡で実績が上がっているにもかかわらず、エジプトの考古学界には未だにこの技術を懐疑的に見る人が多い中で、これは特に重要なことだ。(参考記事:「マヤのピラミッドに科学のメス、謎を解明へ」

「伝統的な考古学の方法より効率的で、より非破壊的な調査を可能にしてくれるかもしれません」とポルチェリ氏は言う。

 ナショナル ジオグラフィックの考古学者フレデリック・ヒーバート氏も同意見だ。

「これは王家の谷で行われた最初の決定的なGPRプロジェクトです。方法の有効性を証明するものです。今後エジプトで行われるであろう優れた研究でも役立つでしょう」

「がっかりする結果かもしれませんが、科学には逆らえません」

【この記事の写真をもっと見る】ギャラリー:ツタンカーメンの墓に隠し部屋はなかった 写真あと7点

文=Kristin Romey/訳=山内百合子

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