ナショナル ジオグラフィック2016年5月号「イエローストーン」特集に掲載された画期的な一枚は、いかにして撮影されたのか。写真家チャーリー・ハミルトン・ジェームズが語る。
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私はこの写真を、米ワイオミング州にあるグランド・ティートン国立公園で撮影した。「グレーター・イエローストーン生態系」の一角をなす、自然豊かな国立公園だ。
何よりも、ティートン山脈を背景に、クマやオオカミの写真を撮りたいと考えた。そこである場所に、動きに反応してシャッターを切るカメラトラップを設置した。ある場所とは、公園の職員が、車にはねられて死んだ動物をときどき捨てに来る場所だ。カメラはここで何カ月もかけて、およそ20万枚もの写真を撮った。
カメラを入れたボックスにはカムフラージュを施したものの、それ以外はクマやオオカミから隠す工夫はしなかった。なぜなら彼らは、視覚よりも嗅覚への依存が強い。それに、いずれにしてもカメラがあることには気づいていただろうから。
私は週に1度、武装したパークレンジャーと一緒にカメラをチェックしに行った。食事をするクマに近づくのは危険が伴うからだ。128GBのカードを2枚挿入したデジタル一眼レフカメラNikon D7100に写っていたのは、ほとんどカラスやハゲワシだった。車の中で、ノートパソコンでさっと確認し、いいものは保存し、悪いものは削除した。その後カードをリセットし、バッテリーをチェックし、その場を離れるという作業を繰り返した。
冒頭の写真は、ある朝に撮られたものだ。おとなのグリズリーのオスが走ってきて、バイソンに群がるカラスを追い払った。その動きにセンサーが反応し、シャッターが切れた。クマの写真を見つけたとき、私はとても興奮した。望み通りの写真が得られるまで、実に5カ月近くもかかったのだ。自分が撮った写真を気に入ることはめったにないが、この写真は本当に気に入っている。
ただひとつ、いちばん上のカラスがグランド・ティートン山にかぶって飛んでいることだけが歯がゆいけれど。