5月にケープタウンの水がなくなる、非常事態

南アの大都市で未曽有の水不足、都市の渇水は世界各地で起きている

2018.02.07
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渇水の危険がある都市

 メキシコ、メキシコシティでは、2100万人にのぼる市民の多くが、すでに水道を1日のうち一部の時間しか使うことができず、また5人に1人は週に数時間しか使えない。インドでも、複数の大都市で水が不足している。オーストラリア、メルボルンの水管理担当者は昨夏、この先10年あまりで水がなくなる可能性があるとの予測を発表した。インドネシア、ジャカルタは住民が地下水を汲み上げるせいで乾燥が進み、海面上昇よりも速いスピードで街が沈みつつある。(参考記事:「巨大防潮堤は沈みゆくジャカルタを救うか?」

 ケープタウンによく似た例がブラジル、サンパウロの貯水池で、2015年には水量が減りすぎて水道管に泥が入り、緊急出動の給水車は略奪に遭い、多くの家で水道の使用が週2回、数時間まで制限された。ぎりぎりになって雨が降ったおかげで、ブラジル当局は完全な断水を回避することができた。

【この記事の写真をもっと見る】ロサンゼルス市が貯水池に「シェードボール」を投入
2009年9月に撮影された、約300万個のプラスチック製の黒いボールに覆われた米ロサンゼルスのアイバンホー貯水池。これらの「シェードボール」は、水温を下げて発がん性物質を生成する化学反応を弱めるための対策だ。(PHOTOGRAPH BY GERD LUDWIG, NATIONAL GEOGRAPHIC)

「サンパウロに残されていた水は20日分もありませんでした」と語るのは、世界資源研究所でグローバル・ウォーター・プログラムを担当するベッツィー・オットー氏だ。「水不足には、数多くの要因が重なっていることが明らかになりつつあります。ひとつだけでは過小評価されたり、無視されたりしている要因であっても、集まれば強烈な嵐を引き起こします」(参考記事:「雨が増えて水質汚染が拡大する、最新研究」

 人口増加に伴う水需要の増加や気候変動のほか、メキシコシティやジャカルタの例のように、インフラに問題がある場合も少なくない。水管理の方法が非衛生的だったり、水漏れがあったり、重金属に汚染されていたり、需要に見合うだけの供給ができない場合もある。

 こうした問題の原因は主に予算だが、そこにはほぼ例外なく政治力学も働いている。

政治の誤算

「率直に言って、危険なのは国の政治制度に対応能力が欠如していることです」。米オハイオ大学の副学部長で、環境研究プログラムの責任者を務めるジェフ・ダベルコ氏は言う。「この先の10年間で最も注目されるのは、激しさを増す変化に政治制度がどれだけ対応していけるかということでしょう」

 南アの場合、与党のアフリカ民族会議と、ケープタウンの市政を担う野党の民主同盟が、どちらも水の管理運営に対する責任の一端を担っている。専門家らは、国と市がそれぞれ根本的な失策を犯したと指摘する。

 資源管理専門家のタートン氏は言う。「国も市も、これは短期的な干ばつであり、いずれ通常の状態に戻ると見込んでいました。しかし今の干ばつについては、気候変動もその要因となっています。当局者らは、水需要がこの先もひたすら高まり続けるということをようやく理解し始めたようです」

 目下、ケープタウンは急ピッチで新たな供給源の導入を進めている。4カ所に新しい海水淡水化プラントを建築中で、井戸が掘られ、廃水を再利用する工場も作られている。こうしたプロジェクトの大半は、建築工程の半分以上を終えている。(参考記事:「水不足は脱塩技術で解決できるか?」

 しかしほとんどプロジェクトは当初予定より遅れており、当局は少なくとも何かしらの設備を完成・稼働させようと躍起になっている。

「ケープタウンの住人は、状況がこれほど急激にエスカレートしたことに対し、非常に驚いています」と、プレトリア大学の公共政策アナリストで資源管理を専門とするマガリー・ブールブラン氏は言う。「しかし人々は今、状況がどこまで悪化する可能性があるかについて、一気に理解しつつあります」

文=Craig Welch/訳=北村京子

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