南アフリカ共和国きっての大都市ケープタウン。しかし数カ月後には、その市民400万人は列を作って飲料水の配給を受けることになるかもしれない。
人口増加と記録的な干ばつが、かつてないほど深刻な渇水危機を引き起こしている。南ア政府は、水道の水が使えなくなる「デイゼロ(Day Zero)」の到来は避けられない見込みと警告する。デイゼロが来るのは5月11日と予想されており、貯水池の水量が危険なほど低くなるため、市当局は家庭や商業用の水道を強制的に停止せざるを得ない。(参考記事:「ソマリア、干ばつで大量餓死の危機高まる」)
「現在、私がすべての時間をつぎ込んでいるのは、デイゼロがやって来たとき、どのように市民に水を提供し、混乱を避けるのかという問題だ」。元ケープタウン市長で現西ケープ州首相のヘレン・ツィレ氏は、1月22日に南アフリカのオンライン新聞に掲載されたコラムにそう書いている。
ケープタウンのような国際都市で、これほど大規模な断水が起こる事態はほとんど想定されてこなかった。ところが現在、北米、南米、オーストラリア、アジアに至る数々の都市で、深刻な飲料水不足に陥る危険が高まっている。過剰な開発と人口増加、それに気候変動の影響で、水の利用と供給のバランスが崩れていることが背景にある。(参考記事:「【動画】水場で水を飲むコアラ、温暖化で増加か」)
「残念ながら、ケープタウンはすでにぎりぎりの状況です」。南アの資源管理の専門家アンソニー・タートン氏はそう語る。「解決策を講じる時間はありません。奇跡でも起こらなければどうしようもありません」
洗車は禁止、水泥棒パトロールを強化
状況は日ごとに悪化している。
ケープタウンでは、食料雑貨店の外などの人が集まる場所に、緊急の給水ステーションを200カ所準備している。各ステーションにつき約2万人分の水を供給しなければならない。市当局は軍事施設に緊急用の水を貯蔵することを計画しており、水道を使ってプールに水を貯めたり、洗車をしたりすることはすでに禁止されている。つい先日、当局は自然の水源からの水泥棒に対するパトロールを強化した。また、ボトル入り飲料水の値段を釣り上げている「悪徳業者」の取り締まりも求められている。
市民に対しては何カ月も前から節水の呼びかけが続けられてきたが、大半の人は自主的に使用を制限しようとはしなかった。そこで1月上旬、市はさらに厳しい節水を求め、水の使用量を1日50リットルに留めるよう要請した。これは平均的な米国人が使う量の6分の1以下だ。当局は先日、使用量が直ちに激減しなければ、全員が否応なしにデイゼロを迎えることになるとの警告を出した。これが現実となれば、市民は1日25リットルという、4分間のシャワーで使うよりも少ない量の水で暮らすことを余儀なくされる。
「デイゼロを避けられるかどうかはわかりません」と、ケープタウン大学で都市の水について研究するケビン・ウィンター氏は言う。「我々は水を使いすぎており、使用を控えることもできません。状況は悲惨です」
南アフリカ、ウィットウォーターズランド大学グローバルチェンジ研究所のデビッド・オリビエ氏は言う。「根本的な問題は我々のライフスタイルです。誰もが自分には好きなだけ消費する権利があるという感覚を抱いているのです」