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 米国オーランドにある、同性愛者が集うナイトクラブで起こった銃乱射事件では、ある事実が浮き彫りになった。それは、「基本的な法的権利があっても、必ずしも安全が守られるわけではない」ということだ。そして世界各国の法律を見ると、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)である市民を「守ろう」とするどころか、積極的に処罰の対象とする国々も存在する。(参考記事:「オーランド銃撃事件を世界が追悼、写真11点」

 国際レズビアン・ゲイ協会(ILGA)が世界の性的指向に関する法律を調査したところ、73カ国、国連加盟国の37パーセントが、同性同士の性行為を違法と定めていることがわかった。

 スーダン、イラン、サウジアラビア、イエメンは、同性愛の性行為に対して国内全域で死刑を科している。他にも、地域によって死刑や罰金刑、懲役刑が科される国もある。上の地図に示されている通り、同性愛を違法としている国はアフリカや中東にほぼ集中しているが、カリブ海地域などにもいくつか存在する。

反同性愛は植民地時代の名残

 この報告書をまとめたエインガス・キャロル氏は、こうした国々のおよそ4分の3は、植民地時代の名残で同性愛を禁じていると指摘する。たとえばインドの刑法第377条は「自然の秩序に反する性的行為」を禁じているが、これは英国統治下にあった1860年代に導入されたものだ。同法は2009年にいったん無効とされたものの、2013年に復活している。

 刑法第377条は「反同性愛法の模範」となった、と米国の人権NGO「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」が2008年に発表した報告書で、著者のアロク・グプタ氏は述べている。「その影響はアジア、太平洋の島々、アフリカなど、かつて大英帝国の旗がはためいていたほぼすべての地域に及んでいる」という。(参考記事:「同性愛行為が犯罪となる国々」

2015年8月、ウガンダのエンテベで開催されたゲイ・プライド・パレードの参加者。ウガンダは同性愛を違法としている73カ国のうちの1つだ。(Photograph by Isaac Kasamani, AFP, Getty Images)
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 新たな法律でLGBTの「プロパガンダ」や「プロモーション」を禁止することで、性表現の弾圧を進める国もある。ロシアでは1993年に同性愛行為が合法化されたが、2013年になって「非伝統的な性的関係」を公に支持することが禁じられた。10代のためのLGBTオンライン・ネットワークを設立したレナ・クリモバ氏は昨年、この法律によって罰金刑を受けている。

 「これはその人を『抹消』する行為です」キャロル氏はこうした法律について、たとえばネット上のプロフィールに、LGBTのシンボルである虹色の旗をのせるだけでも、違法であると拡大解釈される恐れがあると述べている。「その人の本当の姿が、公共の空間や対話から消し去られてしまうことになるのです」

 悪い傾向ばかりではない。同性愛を違法とする国の数は、ILGAが年次報告書の作成を開始した2006年時点では92カ国だったが、今はそれより減少している。これは「すばらしいことです」とキャロル氏は言う。事実、国連が作成した、同性愛に関する法律の変遷図を見れば、1790年から現在に至るまで、同性愛の合法化が拡大していることがわかる。

 さらには、それ以上の権利が認められている国もある。ブラジルやアルゼンチンなど南米の国々では、自己申告による性別変更を合法としており、「この分野に山を動かすほどの変化」をもたらしたとキャロル氏は言う。各国の人権機関は「性的指向や性別認識を人権問題として、きちんと認知されるべきものであるという事実を受け入れつつあります。これには大いに希望が持てます」

米国でも200近い数の反LGBT法案

 6月にジュネーブで開かれる国連人権委員会の会合では、LGBTに対する人権侵害について調査する、特別報告者の任命が議題に挙げられる予定だ。米国のある外交官はニュースサイト「バズフィード」に、「そうした役割を担う人物を置くことが、(同様の役割を持つ機関の)正式な設立を目指す上でとても重要です」と語っている。

 一方で、性認識や性別にもヘイトクライム(憎悪犯罪)を禁じる連邦法が適用される米国においてさえ、今年になってから200近い数の反LGBT法案が州議会に提出されていると、米NPO「ヒューマン・ライツ・キャンペーン」は指摘している。フロリダ州で新たに成立した「牧師保護法」は、聖職者が同性同士の結婚式の挙行を拒否できるようにする法律だ。性認識に基づく雇用差別を禁ずる法律がある州は、全体の半分にも満たない。

 さらに米国では、ヘイトスピーチの法的な規制が行われていないとキャロル氏は言う。ソーシャルメディア発のメッセージが簡単に拡散される世界において、そうした法律は効果的な抑止力となりえる。冒頭の調査によると、アイルランド、南アフリカ、ノルウェーなど、36カ国にはヘイトスピーチを規制する法律がある。(参考記事:「米でムスリム差別、爆弾テロ以降」

 言うまでもなく、法規制ですべてが解決するわけではない。法律がどうあろうと、多くのLGBTが日々直面する現実が厳しいものである状況は変わらない。「我々は世界中どこへ行ってもマイノリティです。どの国にいようとも、安全が保証された存在にはなりえないのです」

文=Christina Nunez/訳=北村京子