心拍数1200から重さ180kgまで、動物の驚異の心臓

速かったり、大きかったり、アンバランスだったり、なかったり心臓も様々

2016.02.19
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哺乳類で最も心拍数が高いヨーロッパヒメトガリネズミ。小さな体の中で、毎分1200回も心臓が鼓動している。(PHOTOGRAPH BY SCOTT TILLEY, ALAMY)
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 バレンタインデーの時期、街にはハートをかたどったディスプレイがたくさん飾られた。一口に「ハート」、つまり心臓といっても、動物によってずいぶんと違うようだ。(参考記事:「心臓の鼓動を聞くと勘が冴える?」

心拍数が高いのは?

 人間の成人の場合、安静時の心拍数は毎分60~100程度だ。では心拍数が最も高いのはどの動物だろう? 米ペンシルベニア大学獣医学部の循環器学教授マーク・オヤマ氏は「トガリネズミの心拍数は毎分1000を超えます。1秒間に16回以上も鼓動している計算です」と話す。

 心拍数が一番高い種が、体重が30グラムにも満たないヨーロッパヒメトガリネズミだ。全米野生生物連盟によると、心拍数は毎分1200にもなるという。オヤマ氏は、動物の心拍数と体の大きさには関係があり、体が小さい方が心拍数が高い傾向があると説明する。(参考記事:「短い寿命、新種トガリネズミ」

心臓が大きいのは?

 では大きな動物の心臓はどうなっているのだろう。クジラの中には、心拍数が毎分10~30しかない種もいる。体長が30メートルほどもある、地球史上最大の動物シロナガスクジラの心臓は動物界で一番大きく、その重さはなんと180キロもある。

 ただし、体重との比率で考えると、「大きな心臓」を持っているのは犬だ。「猫やほかの動物よりも、犬は体に対する心臓の比率がやや大きいです」とオヤマ氏は述べる。犬の心臓の平均的な比率は0.7~0.8%前後で、猫は約0.35%だ。(参考記事:「心臓医学の最前線」

ヒトデには心臓がない。(PHOTOGRAPH BY PAUL NICKLEN, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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左右の心室が大きく違う動物は?

 血液を送ることに注目すると、首が長いキリンの心臓はとてもパワフルに思える。ナミビアを拠点に研究している行動生態学者レイチェル・ブランド氏によると、キリンの心臓は体に対してそう大きくはないが、左右の心室の構造がかなり違うという。

 キリンは、心臓の右心室の壁は厚さ1.5センチ程度だが、左心室の壁はずっと厚く最大で8センチの厚さがある。これは、左心室のほうが筋力が高いことを示している。

 左右の心室で壁の厚みに違いがあるのは、右心室は肺にだけ血液を送ればよいが、左心室のほうは2メートル以上も高い場所にある頭に血液を送り込む重要な役割があるからだ。(参考記事:「巨大恐竜は立ちくらみしなかった?」

心臓の数も動物で違う

 心臓は1つだけとは限らない。イカやタコなどの頭足類には、心臓が3つある。エラ心臓と呼ばれる2つの心臓がエラに血液を送り、そこで取り込まれた酸素を含んだ血液を、もう1つの心臓が全身に送り出す。(参考記事:「南極のタコの血は青くて濃い、予想を裏切る新発見」


【動画】タコたちの激闘:逃げるのか、やるのか。コモンシドニーオクトパスが戦いの意思を確認し合う。オーストラリア南東部で撮影。

 かと思えば、「心臓がない!」動物もいる。「ヒトデをはじめとする棘皮動物には“心臓”も、それに類似したものもありません」と話すのは、首都ワシントンにある米国立自然史博物館の動物学者で、海洋無脊椎動物を専門とするクリス・マー氏。そもそも血液がないため、心臓が不要なのだ。

 心臓の代わりに使われるのが、無数の繊毛だ。繊毛は心臓のように鼓動し、「体内の管と袋」に海水をくみ上げ流し込む。こうした器官には「免疫細胞をはじめ栄養を必要とする細胞」(マー氏)があるそうだ。(参考記事:「ヒトデの目は見えていた!」

文=Liz Langley/訳=米井香織

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