真珠湾にあるアリゾナ記念館の航空写真。記念館の建物の下の海中には1941年12月7日(日本時間8日)の日本軍の奇襲攻撃により沈没した戦艦アリゾナの姿が見える。この攻撃でアリゾナの乗組員1177人が死亡した。(PHOTOGRAPH BY DAVID DOUBILET, NATIONAL GEOGRAPHIC)
真珠湾にあるアリゾナ記念館の航空写真。記念館の建物の下の海中には1941年12月7日(日本時間8日)の日本軍の奇襲攻撃により沈没した戦艦アリゾナの姿が見える。この攻撃でアリゾナの乗組員1177人が死亡した。(PHOTOGRAPH BY DAVID DOUBILET, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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 真珠湾攻撃から75年たった今も、米海軍の戦艦アリゾナは、水深12mの海底で灰色の沈泥に埋もれて眠っている。

 アリゾナは、1941年12月7日(日本時間8日)の朝からずっとここにいる。この日、ハワイの米海軍基地は、日本軍の353機の航空機による奇襲攻撃を受け、2403人の死者と1178人の負傷者を出した。米国は第二次世界大戦に参戦し、歴史の流れを永遠に変えることになった。

【動画】真珠湾の海底に沈んだ状態で保存されている戦艦アリゾナ。往時の姿をとどめた遺物が見える。

 徐々に錆びてゆくアリゾナの船体には、この攻撃で死亡した1177人の乗組員のうち1000人近くが眠っている。存命の生存者は5人にまで減った。けれどもアリゾナは、悪夢のようなあの1日を忘れないという約束を守るため、永遠にこの場所に存在し続ける。

 今週は、集会や献花からコンサートやパレードまで、数々の記念行事が行われる。その中心にあるのは戦艦アリゾナだ。アリゾナは犠牲の象徴であると同時に、科学的調査の舞台でもあり、近年では和解の場としての意味合いも深めている。

生存者の物語

 アリゾナの生存者である94歳のドナルド・ストラットン氏は、「地獄のような1日でした」と回想する。

 当時19歳の水兵だったストラットン氏は、あの日、奇跡的に命拾いした。日本軍の攻撃機が投下した爆弾がアリゾナに命中したとき、同艦に積み込まれていた68万リットルの航空燃料と500トンの火薬と450kg以上の軍需品に引火した。アリゾナは巨大な火の玉に飲み込まれ、ストラットン氏は、上に立っていた高射砲座ごと吹き飛ばされて、全身の70%近くにやけどを負った。「私はすべての指先を無くしました」

 ストラットン氏は軍の病院で1年間静養し、その後、信じられないことだが勇敢にも1944年に再入隊した。「復讐心もありました」と彼は言う。「けれども徐々に、日本人のパイロットたちも私たちと同じように命令に従っていただけなのだということに気がつきました」

1940年10月、一等水兵として米国海軍に入隊したばかりの初々しいドナルド・ストラットン氏。戦艦アリゾナの生存者のうち、存命しているのは彼を含めて5人だけだ。(PHOTOGRAPH COURTESY STRATTON FAMILY)
1940年10月、一等水兵として米国海軍に入隊したばかりの初々しいドナルド・ストラットン氏。戦艦アリゾナの生存者のうち、存命しているのは彼を含めて5人だけだ。(PHOTOGRAPH COURTESY STRATTON FAMILY)
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病院での静養中に知り合った友人たちと写真におさまるストラットン氏(右端)。このときは元気になっていたが、77kgあった体重が一時は42kgまで減ったという。(PHOTOGRAPH COURTESY STRATTON FAMILY)
病院での静養中に知り合った友人たちと写真におさまるストラットン氏(右端)。このときは元気になっていたが、77kgあった体重が一時は42kgまで減ったという。(PHOTOGRAPH COURTESY STRATTON FAMILY)
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 ストラットン氏がケン・ガイヤ氏との共著で最近出版した『All Gallant Men(勇者たち)』という本は、アリゾナの生存者による初の回顧録だ。本を出版したアリゾナの生存者は彼だけではない。真珠湾攻撃の当時21歳だったローレン・ブルナー氏は、自身の体験を元にした小説『Second to the Last to Leave U.S.S. Arizona(最後から2番目に戦艦アリゾナから脱出した男)』を共著で出版している。(参考記事:「「ナガサキ」本を米国で出版、著者に聞いた」

 現在96歳のブルナー氏は、「あの日、私は起床して朝食をとったところでした」と言う。「夜には女の子とデートをすることになっていましたが、行けませんでした」

 アリゾナが爆撃されたとき、ブルナー氏は、ほかの6人の乗組員と一緒に前マストの見張り小屋の中に閉じ込められてしまった。幸い、近くの修理船の甲板にいた水兵が、燃え上がる船上にいた彼らに気づいてロープを投げてくれたので、どうにか脱出することができた。彼は全身の2/3以上にやけどを負い、脱出の際には黒焦げになった皮膚が体からポロポロとはがれ落ちたという。

 2つの病院で静養したブルナー氏は、半年後に再入隊して、アリューシャン諸島、フィリピン、長崎で任務についた。恐ろしい経験をしたにもかかわらず、真珠湾は自分の安息の地だと考えている。今年、戦艦アリゾナのほかの生存者と会うために真珠湾を訪問するという彼は、「私にとっては生まれ故郷に帰るようなものです」と言う。(参考記事:「原爆を運んだ米軍艦、撃沈から70年」

戦艦アリゾナの3門の14インチ砲を調べる米国立公園局のダイバー。船体の一部は第二次世界大戦中に引き上げられたが、海水の濁りのため14インチ砲はなかなか見つからず、1983年になってようやく発見された。(PHOTOGRAPH BY BRETT SEYMOUR, NATIONAL PARK SERVICE, SUBMERGED RESOURCES CENTER)
戦艦アリゾナの3門の14インチ砲を調べる米国立公園局のダイバー。船体の一部は第二次世界大戦中に引き上げられたが、海水の濁りのため14インチ砲はなかなか見つからず、1983年になってようやく発見された。(PHOTOGRAPH BY BRETT SEYMOUR, NATIONAL PARK SERVICE, SUBMERGED RESOURCES CENTER)
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