【動画】もう鎖はいらない、ゾウの飼育場に変化

ネパールで飼われているゾウを鎖から解放する取り組みが進行中

2016.11.21
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【動画】米国の非営利団体「エレファント・エイド・インターナショナル」のキャロル・バックリー氏は、アジアで100頭以上のゾウを鎖から解放した。(解説は英語です)

 ネパールのチトワン国立公園とその周囲の森林では、ゾウが1日19時間も鎖につながれていた。足輪をはめられ、ほんのわずかしか足を動かすことができず、日陰に入ることすらできない。自分の汚物にまみれ、なかには関節炎や足の感染症にかかるゾウもいた。(参考記事:動物大図鑑「アジアゾウ」

 鎖が外されるのは、働かされるときだけだ。ゾウの仕事は、観光客やパトロールをするレンジャーを乗せて運ぶこと。ゾウたちは何世代にもわたって、このような仕事をさせられてきた。

 人を運ぶための調教は時に残忍さを伴うし、南アジアや東南アジアで飼われているゾウのなかには、ひどく酷使されているものもいる。しかしチトワン国立公園周辺のキャンプでは、2014年以来、83頭のゾウが鎖から解き放された。米国を拠点とする非営利団体「エレファント・エイド・インターナショナル」が、鎖の代わりにゾウが逃げ出さないようにする新たな方法を導入して成功したのだ。それが、太陽光発電式の電気フェンスだ。

ネパールのチトワン国立公園のゾウは、働いているときを除き、いつも鎖につながれていた。現在は、ほぼすべてのゾウが鎖につながれていない。(PHOTOGRAPH BY GEMUNU AMARASINGHE, AP IMAGES)
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 鎖から解放されたことで、ゾウたちは歩いたり寝そべったり、仲間と遊んだり、砂浴びや水浴びもできるようになった。ある程度は自然な行動を取れるようになったといえる。これは、動物を利用する上で、人間が与える苦痛やストレスを極力抑えようという動物福祉の観点では重要だ。(参考記事:「【動画】ゾウが池に落ちた仲間を励ます」2016年9月号「毛皮ブーム再来の陰で」

「鎖のない飼育場は、ゾウにとって安全でのびのびと生活できる自由な空間になります。生まれて初めて、ひどい扱いから自由になるのです」と、エレファント・エイド・インターナショナルの創設者、キャロル・バックリー氏は話す。

 現在、ネパールでは約200頭のゾウが飼育されている。それに対して、2011年の報告書によれば、野生のゾウは140頭ほどだ。飼われているゾウの半数以上は個人の所有で、その大半は観光目的だ。そのほかは政府が所有していて、密猟対策のパトロールでレンジャーを運んだり、科学調査用の機器を運んだりしている。

ゾウ飼育の長い歴史

 ネパールでゾウが飼育されるようになったのは、遅くても5世紀頃だと考えられている。ニュージーランドにあるカンタベリー大学のピアーズ・ロック氏によると、当時のリッチャビ王朝では、戦争の際にゾウを使って道の障害物を取り除いたり、補給物資や兵士を戦場に運んだりしていたという。後にゾウはネパールの王権のシンボルとなる。ゾウの重要性はヒンドゥー語の文献にも記されていて、現在に至るまで宗教儀式で重要な役割を果たしている。

 エレファント・エイド・インターナショナルはこれまで、ネパールとタイ、インドの23カ所に新方式の飼育場を作り、100頭を超すゾウを鎖から解放している。太陽光発電式の電気フェンスは、太陽光が3時間当たれば10日間の稼働が可能だ。電気供給が1日に数時間しかない農村部では、太陽光発電のメリットは計り知れない。(参考記事:2013年8月号「大集合!インドのカラフルなゾウたち」

 電気ショックを怖がって、10ボルトの電流が流れるフェンスに近寄るゾウはほとんどいないが、逆に、ショックに興奮してフェンスを壊してしまう雄もいる。そのため、バックリー氏はフェンスの強度を上げることを検討している。

 しかし、ゾウを鎖から解放しても、依然としてゾウがとらわれの身であることに変わりはない。バックリー氏にとって、これは受け入れがたいことだ。「ゾウを飼育することは、痛ましい死へとゆっくり追いやるのと同じです」。バックリー氏は、2013年のナショナル ジオグラフィックの取材に対して、そう述べている。米シアトル・タイムズ紙が行った、全米の動物園で飼われているゾウの健康状態に関する調査も、バックリー氏の考えを裏づけている。米国の動物園は規制や監視が厳しいため、アジアで働くゾウよりも健康状態は良好だ。それでも、飼育されている子ゾウの死亡率を見ると、野生のゾウよりも3倍高く、寿命もかなり短いことがわかっている。

 とはいえ、アジアで飼われているゾウの生活改善の第一歩は「鎖と苦痛からの解放」だとバックリー氏は話す。「鎖から解放されたゾウの喜びようといったら、誰の目にも明らかです。本当にうれしいのです」

文=Rachael Bale/訳=鈴木和博

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