トランプ政権で米国の医療大麻はどうなる?

選挙前は肯定的だったが、新政権のスタッフに否定的な強硬派が参加

2016.11.16
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米国カリフォルニア州オークランドにあるハーバーサイド医療大麻薬局で、医療用カンナビス(大麻の学名)を運ぶイアン・アルメーリコ。大統領選挙の一般投票日に、フロリダ州とノースダコタ州、アーカンソー州の人々は医療マリファナの合法化を支持した。(Photography by Jim Wilson, New York Time)
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 米国大統領選挙の投票日と同じ日に行われた住民投票で、医療用マリファナ(大麻)の合法化は大勝利をおさめた。(参考記事:「米〈医療大麻〉過半数の州で合法に、 推進派医師の言い分は」

 医療用のマリファナの使用に関して選挙が行われたフロリダ州、アーカンソー州、モンタナ州とノースダコタ州の各々の住民は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)やてんかん、パーキンソン病、がん、緑内障などの病気に苦しむ患者にカンナビス(マリファナの学名)の処方を解禁または拡大する案を支持した。

 その結果、総計29州と首都ワシントン(コロンビア特別区)において、医療用マリファナが合法化されたことになる。

 だが来年1月になりトランプ政権が開始したとき、果たしてこれは存続されるだろうか。(参考記事:「トランプ次期大統領が引き起こす気候変動の危機」

2015年の政治集会では肯定

 どうなるかは疑問だ。というのは、米国は民主主義の実験室と言われているとはいえ、この問題の究極的な決定権は、連邦政府にあるからだ。連邦法の下では、使用目的にかかわらずマリファナは違法とされている。(参考記事:「実は病人が入手しづらい〈医療大麻〉のカラクリ」

 米麻薬取締局(DEA)は現状維持が妥当だろうと示唆している。2016年8月、マリファナは従来通り規制物質法の「スケジュールI」に分類されると発表された。つまり、ヘロインやLSD、そして、乱用する恐れが高く医療価値がない他の薬物と同じ区分に含まれたままになる。

 というわけで、米国じゅうの連邦検事は、マリファナの栽培者を自らの裁量によって追跡できる。この件に関してオバマ政権が出したガイドラインでは、取締官は患者を困らせる行為は慎まなければならないが、大麻を数万本育て、その気になればいつでも何百万ドルもの大金を稼げる「マリファナを私的に栽培している大規模な施設」を、疑いをもって注視するように提案している。

 このほど次期大統領に選出されたドナルド・トランプ氏は、過去の発言のなかでこれに似た姿勢をとると述べている。2016年2月、FOXニュースの司会者ビル・オライリー氏が医療用のマリファナを「策略」と非難したところ、トランプ氏は「心の底から困っている人がいるんだ……これを使うと本当によくなるんだよ」と言い返した。(参考記事:「マリファナの科学」

 2015年の政治集会では、「マリファナの合法化は、州で決める問題だと思う。各々の州でね」と語った後、「医療用のは、そうならなくちゃいけないと思う。そうだろ。君たちも賛成するよね。私はそう思う」と付け加えている。(参考記事:「マリファナ合法化の波、米連邦にも」

 だがトランプ氏が政権についたときに、この問題を最重要課題として、いや中の下程度の課題に落としても取り上げるとは考えられない。まわりに説得されて、別の立場をとるかもしれないからだ。

「彼の考え方は、新政府のスタッフからかなり大きな影響を受けると思います」。首都ワシントンにあるブルッキングス研究所の合法化論争の専門家ジョン・ハダック氏は言う。「元ニューヨーク市長のルドルフ・ジュリアーニ氏とニュージャージー州知事のクリス・クリスティ氏たちなど、ドラッグは取り締まるべきだと考えている強硬派に取り巻かれていますからね。マリファナが合法化されると犯罪発生率が上がり、社会の不穏を招くと説得されかねません」

マリファナの中にカンナビノイドと呼ばれる有効な活性成分が存在する。そのなかには、従来の薬では効き目がなかった病気が治療薬として期待されているものもある。(Photography by Linda Davidson, Washington Post/Getty Images)
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研究目的でも入手は困難

 民衆に支持され、医療用マリファナが州レベルで受け入れられるようになっても、ホワイトハウスや共和党の支配下にある議会のどちらも、それに意見を左右されることはない、とハダック氏は否定的だ。「忘れていけないのは、マリファナを定期的に使用しているのは、米国でもまだ少数で、多くの人はマリファナを重要な問題と認識していないんです」と彼は言う。「大半の米国人の考えでは、これより先に論じなければならないことが、トランプ氏のいうように5つあるんです」

 長い目で見れば、麻薬取締局が今年の初めに下した決定が、大きな影響を及ぼすことになるかもしれない。

 マリファナの中に、カンナビノイドと呼ばれる何十もの有効な活性成分があることは、研究者が確認している。そのなかには、従来の薬では効き目がなかった病気の治療薬として期待されているものもある。

 しかし、これらの研究者はジレンマに陥っている。マリファナは医療用に適用されない「スケジュールI」の植物に分類されているため、連邦法のせいで研究用に入手するのが極めて困難だからだ。カンナビノイドの医学的効能を立証したくても、それを研究できなければどうしようもない。

 長年にわたり連邦政府は唯一、ミシシッピ大学にのみカンナビスを育てる許可を与え、米国立薬害研究所(NIDA)の監督下に置き、研究に使う特定の系統を育てさせている。しかし現在、麻薬取締局は合法的にマリファナを育てたければ、他所の施設でも申請を受けつけるとしている。

「NIDAの独占が終わることで、大麻研究のすそ野が広がるとは思いません」とハダック氏は語る。「それでも、研究環境は改善されます。研究用に栽培された高品質なマリファナを、多様に入手できるようになるんですから」

 また、カンナビスの抽出物が、アルツハイマー病や統合失調症などの病状に効果があると実証できれば、医療マリファナをなんとしてでも欲しがる声が高まるかもしれない。

文=Mark Strauss/訳=潮裕子

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