アフリカ、ジンバブエのワンゲ国立公園で、溺れかけていた若いゾウを密猟対策チームが救助し、その様子を収めた映像が公開された。
救助に当たったチーム「エア・シェパード」は、米国リンドバーグ財団と南アフリカの企業「UAVアンド・ドローン・ソリューションズ(UDS)」が連携して設立した団体。アフリカの国立公園でドローンを使った密猟の防止に取り組んでいる。(参考記事:「【動画】くしゃみをする子ゾウがかわいい」)
水場に突き出ていた太い脚
ある日の早朝、エア・シェパードのドローン操縦士、トム・ラウテンバッハ氏とギフト・ハディマ氏は、ワンゲ国立公園内を車でパトロールしていた。それまで数週間、ドローンを飛ばしての監視が続いていたが、この日は久しぶりに地上での巡回だった。
「安全な飲み水を供給するために人工の水場が設置されているのですが、驚いたことに、そこから灰色の太い脚が突き出ていました。よく見ると、ゾウの脚だったのです」と、ラウテンバッハ氏はEメールで回答した。
2人は当初、密猟者に殺されたゾウだと思った。有毒なシアン化物で動物が殺されることがあるためだ。金の採掘に使われるシアン化物は、アフリカ南部では容易に手に入る。密猟者が数キロのシアン化物を水場に投入するというのが典型的な手口で、大型哺乳類から魚、カエルまで、周辺の生物は「すべて中毒死してしまいます」と、エア・シェパードの代表者の1人であるオットー・ヴェルドミュラー・フォン・エルグ氏は言う。
ところが、見つけて間もなくゾウは水場から出ようとしてもがき始めたため、ラウテンバッハ氏とハディマ氏はすぐに救助に取りかかった。フォン・エルグ氏は、2人が行動を起こしていなければ、このゾウは短時間のうちに「間違いなく溺死していたでしょう」と話す。
ゾウの頭は水中に沈んでいたが、長い鼻が水面から出ており呼吸はできていた。2人はゾウの脚にロープを結び、車で引っ張り上げようとしたがうまく行かず、応援を求めた。(参考記事:「【動画】井戸に落ちたヒョウを村人総出で救出」)
国立公園の職員も駆けつけ、ロープを増やしてさらに引っ張った末、水場の中で正しい体勢に戻すことができた。
「当然ですが、ゾウは疲れておびえており、しばらく立つことができませんでした」とラウテンバッハ氏。「ゾウが元気を取り戻すまで少し待ってから、水場が浅くなっている方へ押してやったところ、ゾウは地上に戻ることができました」(参考記事:「【動画】母親ゾウ、リカオン集団からわが子を守る」)
ドローンの密猟抑止力
フォン・エルグ氏によれば、エア・シェパードは南アフリカでの密猟を監視しようと、クルーガー国立公園で4年ほど前にドローンを導入した。以来、メンバーたちが空から目を光らせている。小型で音の小さなドローンを使っており、気付かれないよう夜に飛ばすことが多い。ドローンが出動している地区の情報はすぐに密猟者のネットワークで広まるが、それにより密猟を企てていた者を撤退させる効果もある。(参考記事:「ゾウを殺してゾウを保護するという矛盾」)
現在もそうだが、乾期には動物たちが水場に集まることが多いため、密猟者にとって格好の標的になる。そのため、エア・シェパードもこうしたエリアを頻繁にパトロールする。特に、集落の近くや、密猟者たちが容易にたどり着ける場所にある水場は要注意だ。
「ドローンは密猟者が動物を追うための目印になっていないか」という疑問に対し、フォン・エルグ氏は、ドローンの操縦士は動物の追跡はしないと話す。ドローンは人間や、これまでに分かっている密猟ルートを追っているため、「その懸念は極めて小さい」とのことだ。