頭が2つあるサメが見つかる、卵生で初、地中海

心臓と肝臓は2つで腸は1つ、深海にすむヤモリザメの仲間

2016.10.26
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地中海で見つかった稀少な双頭のサメの胚。(PHOTOGRAPH COURTESY JOURNAL OF FISH BIOLOGY)
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 スペイン、マラガ大学のバレンティン・サンス=コーマ氏率いる研究者チームが、卵から生まれるサメでは初となる双頭の個体を発見した。科学誌「Journal of Fish Biology」に発表された論文によると、見つかった個体はアトランティック・ソーテール・キャットシャーク(Galeus atlanticus)だという。

 アトランティック・ソーテール・キャットシャークは、水深330〜710メートルの地中海西部のみに生息するヤモリザメの仲間で、国際自然保護連合(IUCN)は「近危急種(near threatened)」に指定している。研究者らは、このサメの心臓血管系を調べている最中、頭部がふたつあるものを発見した。それぞれの頭部には口、両眼、脳、片側5つのえら穴が1組ずつちゃんと備わっていた。頭部はえらのうしろあたりで融合し、胃と肝臓は2つあったが、腸は1つだった。

 2つの頭部を持つ奇形は比較的珍しいものの、過去にはヘビやイルカから人間まで、さまざまな動物で見つかっている。(参考記事:「動物の奇形:3つ目のカニ、双頭のカメ」

 サメの場合、子供を出産する種(胎生)と母親の体内で卵がかえる種(卵胎生)で二頭体の個体が見つかった例があるが、卵を産むサメ(卵生)ではこれが初めてだ。

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 過去には頭部が2つあるサメが7体、頭は1つで顔が2つのものが1体見つかっている。(参考記事:「偶然の発見、メキシコで単眼のサメ」

 スペインのチームは、心臓血管系の研究のために797個の胚を収集したが、そのうち頭部が2つあったのは1個体だけであったことから、こうした症例の発現率は、卵生のサメにおいてはかなり低いと思われると結論づけている。

 双頭の個体がなぜ生まれるのか、その原因はわかっていない。だが、研究者チームによれば、3つ目の魚ができてしまうようなある種の環境的な要因というより、おそらく遺伝的な要因だろうという。(参考記事:「世界で増える野鳥の奇形、原因は新種ウイルスか」

双頭のサメの体内構造がわかるスキャン画像。(PHOTOGRAPH COURTESY JOURNAL OF FISH BIOLOGY)
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「頭が2つあるサメはときどき見つかります」と、米フロリダ自然史博物館でサメ研究プログラムを主導するジョージ・バージェス氏は言う。「遺伝子の異常が原因で起こる奇形です。遺伝子の異常にはさまざまな種類があり、大抵の場合、そうした個体が子宮の外に出るまで生き延びることはありません」(参考記事:「ユニコーン? 珍しい一本角のシカ」

 ミシガン州立大学の生物学者、C・マイケル・ワグナー氏はかつてある双頭のサメが発見されたとき、弊誌の取材に対して、こうした珍しい個体の発見に際しては急いで結論に飛びつくべきではないと述べた。

「自然に関する長い研究の中で見つかったこのたった1つの事例から、世界の海の健康状態について何か驚くべき問題が明らかになることは決してありません」(参考記事:「3本の尻尾を持つトカゲが見つかる、コソボ」

 たとえ無事に生まれたとしても、双頭のサメは自然の中では長く生きられないだろうとワグナー氏は言う。泳ぐのも食べ物を見つけるのも、彼らにとっては簡単ではないからだ。

「頭が2つあるサメが泳ぐ姿があまり目撃されないのには理由があります。彼らは非常に目立つため、捕食されてしまうのです」とバージェス氏は言う。「泳ぐことにも、またおそらくは食べ物の消化にも問題が生じるでしょう」

文=Brian Clark Howard/訳=北村京子

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