アマゾンの森「動物たちの宴」を密着取材した

ナショジオ写真家、地上30mの林冠でイチジクに群がる動物たちを撮る

2016.10.04
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
倒木の上を歩いてくるオセロット。コチャ・カシュ生物学研究拠点は地球上で屈指の生物多様性を誇る。(PHOTOGRAPH BY CHRISTIAN ZIEGLER, NATIONAL GEOGRAPHIC)
[画像のクリックで拡大表示]

地上に降るイチジクの雨

 高さ30メートルを超す林冠で、けたたましい騒ぎが始まった。林冠で暮らす多くのサルは、地面に降りることが全くない。一方、木の下でもさまざまな現象が起こっている。

 実のなったイチジクの木の下にいると、無数に落ちてくる実が大きな葉を叩き、雨音のように聞こえる。地面には実がびっしり落ちている。イチジクが地面に降っている間にも、先に落ちた実がもう腐り始め、白い菌類にうっすらと覆われている。小さな白いハエが実の上を飛び、待ちきれずに足踏みをするようにその場で飛び跳ねている。一帯は、ワインのかすや、かびのようなにおいがする。

 日の出や日没のころ、実のなったイチジクの木の下で静かに座っていると、鼻の尖ったパカという小型の哺乳類や、首回りが白くブタに似たペッカリーの群れが食事に来るのを見ることがある。日中には、ニワトリほどの大きさでお尻が白い鳥、ハジロラッパチョウが、列をなしてよちよちと歩いてくるかもしれない。さらには人間の猟師が、サルの肉を目当てに来ることもある。(参考記事:「ペッカリーのヌタ場へ集まる野生動物」

イチジクの樹液を吸うツバメガの仲間。(PHOTOGRAPH BY CHRISTIAN ZIEGLER, NATIONAL GEOGRAPHIC)
[画像のクリックで拡大表示]
イチジクの木は、果実を食べて種子を拡散してくれる鳥やサルに助けられている。イチジクの葉を食べるこのイモムシは、特に役立ってはいないようだが。(PHOTOGRAPH BY CHRISTIAN ZIEGLER, NATIONAL GEOGRAPHIC)
[画像のクリックで拡大表示]

 ある朝、私は、ホエザルの一家が川に近いイチジクの樹上で朝食を取っているのを観察した。食事が済むと彼らは別の木に移動し、母、父、2匹の子どもの順で列を作り、枝に腰掛けた。ヘリコニアの大きな葉の上に糞が落ち、ぴしゃりという音が何度も響いた。近づいて調べると、糞の中にイチジクの種子がはっきり見えた。

 5分もしないうちに、数匹のフンコロガシが上空から舞い降りて、糞に残ったイチジクの成分を探し始める。そして、糞の玉を作った。メスへの求愛のためだ。メスがこれに魅力を感じれば玉を受け取り、産卵場所とする。生まれたてのフンコロガシが取る最初の食事は、イチジクの種だろう。(参考記事:「フンコロガシはなぜ空を見ながら糞を転がすのか」

大雨が降る直前の三日月湖。イチジクの研究が数十年前から行われている生物学拠点のコチャ・カシュは、この湖にちなんで命名された。(PHOTOGRAPH BY CHRISTIAN ZIEGLER, NATIONAL GEOGRAPHIC)
[画像のクリックで拡大表示]

 イチジクは、他のどんな果実よりも多くの野生生物の腹を満たす。ツィーグラー氏は、ガボンやインドネシアにある他の熱帯雨林でも、イチジクの周辺で開催される数日間の宴を追ってみたいと考えている。コチャ・カシュで彼は、宴が開かれる高さまでたどり着くスリルと、すでに宴が終わっていたときの落胆を体験した。マチゲンガ族の若者たちと2番目の木に足場を組んでからわずか2、3日後には、イチジクの実は1つもなくなっていた。「あれは雨の日の後でした」とツィーグラー氏は振り返る。「サルが50匹くらいいた木が、少し見ないうちにもぬけの殻になっていたのです」(参考記事:フォトギャラリー「関野吉晴 マチゲンガ族との交流」

文=Emma Marris、写真=Christian Ziegler/訳=高野夏美

  • このエントリーをはてなブックマークに追加