アマゾンの森「動物たちの宴」を密着取材した

ナショジオ写真家、地上30mの林冠でイチジクに群がる動物たちを撮る

2016.10.04
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イチジクとハチの密接な関係

 宴に集まる動物たちの多様性も魅力的だが、さらに興味深いのは、イチジクの木とその繁殖の方法だ。この木は体長わずか2ミリほどのイチジクコバチと共生している。コバチはイチジクの受粉を担うが、他の受粉者と違い、引き換えとして餌ではなく、安全な保育室を提供してもらう。(参考記事:「イチジクの砦を支える小さなハチたち」

シロガオオマキザルたちは、クリスチャン・ツィーグラー氏と彼の大きなレンズに興味津々だった。この若い個体もそのうちの1匹。とはいえ、一番興味があるのは、できるだけたくさんのイチジクを口に詰め込むことだった。(PHOTOGRAPH BY CHRISTIAN ZIEGLER, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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 イチジクコバチは、イチジクの種になる胚珠という部分に花粉をつけ、産卵もそこでする。花を咲かせる他の植物同様、イチジクの胚珠も花の中にあるのだが、未熟な果実の中に花自体がしまい込まれている。細かな花を無数につけた花束を裏返しにして、狭い球体の中に詰め込んだようなイメージだ。

 コバチの卵は、オスが先にふ化する。オスたちはすぐさまメスがいる卵に穴を開け、ふ化する前のメスと交尾する。受精した状態でメスが生まれてくると、オスは妹でも妻でもあるメスのためにイチジクをかじって、外に通じるトンネルを作る。メスは受精した卵をいっぱいに宿して、その穴から外に出ていく。このとき、途中でイチジクの花からこすり取った花粉が体中に付いている。

 オスは実の中で死に、生を受けた小さな世界から出ることはない。したがって、熟した野生のイチジクを食べると、小さなオスのコバチを数匹も食べることになる可能性が非常に高い。しかし、スーパーに並ぶようなイチジクは受粉を必要としないため、その心配はない。(参考記事:「金属ドリルで果実に穴をあける寄生バチ」

マヌー川の岸に落ちた小さなイチジクに、ミモザイエローと呼ばれるチョウの群れが集まっている。(PHOTOGRAPH BY CHRISTIAN ZIEGLER, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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 外の世界に出たメスのコバチは、実をつけた別のイチジクの木を探さなくてはならない。空中のわずかな化学信号を追って10キロ近く、時には160キロ以上飛ぶことさえある。良さそうなイチジクを見つけると、メスは実に開いた小さな開口部から中に入り込む。イチジクとイチジクコバチは共に進化してきたため、この穴はメスのコバチの頭がちょうど通れる大きさになっているのだ。実の中を進んだメスは、中にある胚珠の半分ほどに卵を産み、残りの半分に自分が運んできた花粉を付けていく。受粉した胚珠は、実が熟するとともに種子となる。

 その果実を鳥やサルが食べ、遠くの木に止まったり、枝の上で寝そべったりしているときに種が排泄される。イチジクにとって理想的な状況だ。種子は林冠の中、おそらくはわずかに土がある小枝の股の部分で芽吹き、地面に向かって根を伸ばす。根は成長しながら宿主の木にからみつき、やがて包み込み、絞め殺して乗っ取ってしまう。成長したイチジクの木は滑らかな幹を天に向かって伸ばしているが、若木のころに支えとなった木の死骸を内側に隠しているなど、誰も気付かないだろう。(参考記事:「動けない“寄生樹”ヤドリギがほかの木にとりつく驚きの戦略」

 とはいえ、イチジクの木が生態系で特に大きな役割を果たす鍵は、コバチとの関係とタイミングにある。イチジクコバチの卵が成熟してふ化するには約1カ月かかる。しかしメスが生まれてから、産卵先のイチジクを探して死を迎えるまでには1~2日しかない。つまり2日間で、産卵するにふさわしいイチジクを見つけねばならないのだ。太古からの共生関係を保っていくため、イチジクはコバチ同様、1年中いつでも実をつけざるをえない。実のなる他の木と違い、全ての木が同じ季節に実るわけでもない。個々の木が実をつける時期はばらばらで、それゆえ産卵に使えるイチジクが常に存在する。そして今日も森のどこかで、にぎやかなパーティーが開かれている。

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