野外のネコは排除されるべきか、米で議論

書籍『Cat Wars』をきっかけに野外に暮らすネコの問題を考える

2016.09.26
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去勢して放せばそれで十分なのか

 米国では長い間、野ネコの数を減らす方策として、捕獲して去勢手術を施し、放すという活動を続けてきた。この活動は実際に効果が表れていると、野ネコ保護活動家のロビンソン氏は言う。「野ネコをかき集めて全て殺すという方法はうまくいかなかったのです」。ネコは繁殖が速く、一部の地域でいなくなってもすぐに他から別のネコたちがやってくるからだ。全て捕まえようというのは不可能なのだ。

 その点は認めつつも『Cat Wars』が挙げるのは、米国の鳥類保護協会や野生生物連盟など多くの保護団体が、捕獲去勢だけでは十分ではないとしてこの活動に反対していること。一例として、ある地域のネコたちを去勢しても、やはり別のネコたちがやってきて数が増えてしまったというイスラエルの研究を挙げている。

 また、捕獲去勢の努力が実るには何年もかかり、その間にもネコは野生動物や人間に脅威を与え続けるとマラ氏は主張する。それに、ペットのネコを捨てる人間も後を絶たない。

 しかしロビンソン氏は、実際にこの活動のおかげで消滅したネコ集団は多いと反論する。米国で捕獲去勢を実施している地域は600以上。中には、30年続けているところもある。「このやり方は効果を表しています」と、ロビンソン氏。(参考記事:「ネコは飼い主をネコと思っている?」

ネコと生物多様性

 今のところ、『Cat Wars』に対する反応は真っ二つに分かれているようだ。2013年にナショナル ジオグラフィック誌にヨーロッパの渡り鳥がさらされている脅威について寄稿した小説家のジョナサン・フランゼン氏は、『Cat Wars』を高く評価する。(参考記事:2013年7月号「渡り鳥 最後のさえずり」

「マラ氏とサンテラ氏の本は、大いに歓迎したいです。外ネコが生物多様性へ与える影響について考えようという人はとても少なく、それをオープンに話そうという勇気のある人はさらに希少です」

 米国ヒューメイン・ソサイエティーは、飼いネコは外に出さないという意見には賛同するが、「あらゆる手段を講じて」それを押し付けることには反対という。そんなことをしなくとも、過去数十年間訴え続けてきた教育プログラムが既に大きな効果を表しているとの主張だ。

 米国ペット用品協会が実施したアンケートでも、完全室内飼いのネコが1970年には約20%だったが、2012年には65%前後にまで増えたことがわかっている。また、今では米国で飼われているネコのほとんどが去勢手術や避妊手術を受けている。

 即効性があるわけではないが、ネコを完全室内飼いにすることと、去勢または避妊手術を受けさせるという昔ながらのアドバイスが効果を上げていると、ネコの保護活動家たちも言う。マラ氏も本の中でこれらの努力を評価しているが、一方で野生生物や人間への脅威がとりわけ深刻な地域では、安楽死という選択肢も完全に排除すべきではないともいう。ニュージーランド政府が2050年までに外来の捕食動物を根絶させる方針を打ち出したばかりだが、同様の政策を他でも実施することが究極のゴールだという。(参考記事:「ニュージーランド、2050年までに外来種を根絶へ」

 ロビンソン氏は、安楽死には反対の立場を崩さない。そして、「『あらゆる手段を講じてネコを野外から排除すべき』という言い方は間違っていると思います。これでは、暴力を奨励しているのと同じことです」と繰り返した。

文=Jason Bittel/訳=ルーバー荒井ハンナ

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