世界初、犬の一卵性双生児を確認

一卵性双生児が人間以外ではきわめて珍しいのはなぜか

2016.09.07
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世界で初めて確認された一卵性双生児の子犬。

 先日誕生した2匹のアイリッシュ・ウルフハウンドが、科学者の間で大きな話題となっている。この2匹が、犬としては世界で初めて、遺伝子分析によって一卵性双生児であると確認されたからだ。

 犬にも一卵性双生児が生まれるというのは、かねてより言われてきたことであり、実際にそういった事例の報告もあったものの、科学論文によってそれが裏付けられたのは今回が初めてとなる。双子というのは人間には比較的よく見られる一方、他の種においてはきわめて珍しいという。(参考記事:「犬は飼い主の言葉を理解している、脳研究で判明」

 カレンとロミュラスと名付けられた一卵性双生児の子犬の出産を手がけたのは、南アフリカ共和国のモガレシティーにあるラントエンダル動物病院の獣医、カート・デ・クレイマー氏だ。同氏は苦しむ母犬に帝王切開を施している最中、2匹の子犬の臍帯(さいたい)が、それぞれ同じ胎盤に繋がっていることに気がついた。獣医としての数十年間の経験の中で、こうした例を見たのは初めてであったという。

 このときの出産では他にも5匹の子犬が生まれたが、その子たちは一般的なケースと同じく、1匹ずつ別々の胎盤に繋がっていた。

 カレンとロミュラスの外見は驚くほど似ていたものの、白い模様に少しだけ異なる部分があった。しかし2匹の血液サンプルは、彼らが間違いなく一卵性双生児であり、ひとつの受精卵が分割して誕生したことを示していた。(参考記事:「双子が明かす生命の不思議」

 模様の微妙な違いは、同じ遺伝子群を持った2匹の子犬でも、各遺伝子の発現はちょっとした環境要因によって影響を受けるという事実を考えれば不自然ではない。これは人間の一卵性双生児の外見がまったく同じではないことの理由のひとつでもある。

 デ・クレイマー医師はその後、オーストラリアにあるジェームズクック大学のキャロリン・ジューン氏、南ア・プレトリア大学のジョハン・ネースリング氏など数名の学者の協力を得て双子の子犬の分析を行い、その成果を先日、学術誌『Reproduction in Domestic Animals』に発表した。

 人間以外において、一卵性双生児が確認されるケースはきわめて稀であると執筆者らは指摘する。論文の中ではまた、一卵性双生児が生まれたものの、記録に残されていない可能性についても言及されている。野生動物(さらには家畜やペットでも)を対象とした遺伝子検査は、これまでごく少数しか行われてこなかったからだ。野生動物の中では、少なくとも1種類の動物(ココノオビアルマジロ)が、常に一卵性の四つ子を産むことがわかっている。

【動画】米ツインズバーグの街で開かれる世界最大の「双子祭り」。

 人間に比べ自然界では双子が少ないことについて執筆者らは、ひとつの胎盤の中に2つの個体がいると、それぞれに与えられる栄養分が少なくなるからではないかと考えている。厳しい自然界においては、そうした子供は丈夫に育たず、1匹で生きていく力を持てない可能性がある。人間の場合、社会的な保護や熱心に世話をする両親の存在のおかげで、同様の懸念はかなり小さくなっている。

 人間の場合、自然妊娠で双子が生まれるのはおよそ80回に1回であり、一卵性双生児はそのうち約3分の1を占める。一卵性双生児の割合はどの国や文化においてもほぼ同じだが、家系に遺伝する場合もある。二卵性双生児の割合は、特定の妊娠誘発剤を使うことによって上昇する傾向にある。

 一卵性双生児は、ひとつの接合子(受精卵)が分割してふたつの胚が作られることによって生まれる。二卵性双生児はふたつの受精卵から成長する。

 双子に詳しい心理学者のナンシー・L・シーガル氏は、人間の場合、一卵性双生児は、二卵性双生児やその他の兄弟姉妹に比べて互いに親密な関係を築く傾向にあると述べており、事実、一卵性双生児は似たような習慣や癖を持ちやすい。しかしその後、徐々に違いが多くなってくる。これには異なる環境からの作用のほか、未知の要因が影響している可能性もあるという。(参考記事:「第1回 遺伝か環境か、それがモンダイだ」

文=Brian Clark Howard/訳=北村京子

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