太陽系から最も近い地球型惑星発見、過酷な環境

54日間念入りに観測、生命存在の可能性は?

2016.08.26
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恒星の仕業でないことを徹底検証

 ケンタウルス座アルファ星Bの惑星や、その他の大きな話題になった太陽系外惑星の発見がのちになって撤回された前例を見てきた彼らは、慎重に確認を行った。彼らはまず、21世紀に入ってからこれまでに得られていた観測データを再検討した。新しい、より良い方法でデータ処理を行ったところ、不明瞭だった信号がはっきり見えてきた。

 次に、11.2日周期の信号が主星によるものではないことを証明する必要があった。この証明は非常に重要だが、容易ではない。プロキシマ・ケンタウリでは、ときどき爆発的なフレアが発生しているからだ。

 米カリフォルニア大学バークレー校のローレン・ワイス氏は、「惑星と思われる信号が実際には恒星活動によるものであることを証明するためのテストがいくつかあるのですが、著者らはそれを全部やった上で、惑星だと考えてよいと判断したのです」と説明する。

 研究チームが行った検証の1つは、惑星と間違えるような恒星活動が定期的に発生していないかどうか、地球から主星を観測することだった。しかし、地上の複数の望遠鏡を使った観測からは、11日周期の変動と一致するような恒星活動は見つからなかった。

 エール大学のデブラ・フィッシャー氏は、「相関がありそうなものは何もありません」と言う。彼女は、プロキシマbの存在は盤石とは言えないかもしれないが、かなり信頼できると考えている。

 プロキシマbに兄弟がいる可能性さえある。アングラーダ-エスクデ氏によると、観測データからはもう1つ信号が見つかっていて、公転周期200日のスーパーアース(地球に似た組成で、地球の数倍~10倍程度の質量を持つ太陽系外惑星)によるものかもしれないという。この信号の正体を明らかにするためには、さらなる研究が必要だ。

ケンタウルス座アルファ星は、A星、B星、プロキシマからなる三重連星だ。Digitized Sky Survey 2による写真を合成したもの。(PHOTOGRAPH BY ESO, DAVIDE DE MARTIN, AND MAHDI ZAMANI)
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トランジット法による観測

 太陽系外惑星の存在を確認するもう1つの方法は、惑星が主星の手前を横切るときの主星の明るさの変化をとらえることだ(トランジット法)。科学者たちはすでに、カナダのMOST宇宙望遠鏡をプロキシマに向けて、トランジット法での観測を行っている。(参考記事:「太陽系外惑星と宇宙における生命」

「トランジットが起こればホームランです。近くの恒星のハビタブルゾーン(主星から近すぎず遠すぎず、表面に液体の水が存在するのにちょうどよい距離)にある地球サイズの惑星の存在を確認するなら、ラジオ放送が聞こえてくるなどの特別な事情がないかぎり、トランジット法による確認がいちばん確実です」とラフリン氏。

 しかし、恒星の前を横切る惑星を地球から観測できるほど完全な並びになることはまれである。ラフリン氏は、その可能性をわずか2%と見積もっている。

 MOST宇宙望遠鏡のデータの分析はまだ終わっていないが、MOSTの研究チームを率いる米コロンビア大学のデヴィッド・キッピング氏は、今のところ、「プロキシマbの存在を否定するデータは出ていません」と言う。

 HARPSや近いうちに稼働するその他の高感度観測機器を使って行われる観測は、今回の信号が惑星によるものか恒星の活動によるものかを確認するのに役立つだろう。この数年の待ち時間により、観測の信頼性はいっそう高まる。

「11日周期の信号が惑星によるものであれば、いつ観測してもほとんど変わらないはずです。恒星活動にはゆらぎがありますが、惑星は常に存在しているからです」とワイス氏。「逆に、数年後に誰かが同じ観測をして、同じ信号を見つけることができなければ、それは不吉な兆候です」(参考記事:「7万年前に恒星が最接近、地球に彗星の嵐か」

地球外生命への期待

 この惑星が、生命が住むのに適しているかどうかが明らかになるのはもう少し先になりそうだ。プロキシマbがどのような惑星なのか、まだよく分からないからだ。けれども、現時点の情報からは、地球にそっくりである可能性は低く、まったく似ていない可能性もある。(参考記事:「地球に「最も似ている」太陽系外惑星を発見」

 アングラーダ-エスクデ氏は、「公転軌道から言えば、プロキシマbはハビタブルゾーンにありますが、だからといって生命が居住できるわけではありません」と言う。「この点についての議論はこれからです」(参考記事:「宇宙生物学のいま」

 そもそも、主星であるプロキシマ・ケンタウリは、年齢以外に太陽に似ているところはない。質量は太陽の約12%しかなく、磁場は太陽の600倍もあり、主として赤外線波長の光を出している。また、太陽に匹敵するほどのX線を放出しているので、すぐ近くを回っているプロキシマbには恐ろしい高エネルギー粒子が降り注いでいるはずだ。

 一般に、赤色矮星では激しいフレア活動が発生していることが分かっているが、プロキシマのフレアは特に巨大だ。この恒星は比較的高齢なので、いくらか落ち着いてきているはずだが、かつては強力な紫外線を放射していたと考えられ、若い惑星の表面で生命が芽生えたとしても、恐ろしい打撃を受けただろう。

 それだけではない。惑星を包む大気は、主星の巨大なフレアやX線の猛攻撃を受けて、完全に剥ぎ取られているか、化学変化を起こしていて、強烈な放射線が地表にそのまま降り注いでいる可能性がある。

 米コーネル大学のリサ・カルテネガー氏は、「大気が薄くなれば、より多くの紫外線が地表に到達します。地表にいた生命は、地下や水中に避難するか、別の方法で自分の体を保護しなければならないでしょう」と説明する。

 また、主星から700万kmしか離れていないプロキシマbは、常に一方の面を主星に向け、もう一方の面は永遠に宇宙の闇を見つめているのかもしれない。

 もちろん、プロキシマbが地球とは全然違うからといって、生命が進化できない理由にはならない。ただ、その歴史は、地球の生命進化の歴史とはまったく違ったものになるだろう。

 カルテネガー氏は、「この惑星に生命が存在しているなら、その始まりは、地球上の生命の始まりに比べてはるかに過酷なものだったでしょう」と言う。「だからこそ、太陽系外惑星の研究は面白いのです。地球とは似ても似つかない惑星が、私たちが想像もしなかったような、生命の驚くべき多様性を見せてくれるかもしれないのです」(参考記事:「【連載】宇宙に生命を探せ! 研究者が語るアストロバイオロジー入門」

文=Nadia Drake/訳=三枝小夜子

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