ライオンのメスは排卵を同調、ヒトの生理と異なる

子どもの生存率を高めるため同時に発情し、共同で子育て

2016.08.26
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女性の生理と異なり、ライオンのメスは排卵を同期させられる。共同で子育てをするため、同時期に発情、出産すると、群れの繁殖力は高まる。(説明は英語です)

 ザンビア共和国でライオンの研究をしていた生物学者サンダウィ・ムウィートワ氏は、ひとつの群れに属するメスライオンたちが、ほぼ同時に子どもを産むことに気がついた。(参考記事:「樹上のライオン、ザンビア」

 さらに注意して観察し、一緒に子育てできるようにメスライオンたちが繁殖の時期を同調させていることを知った。(参考記事:「ライオン 生と死の平原」

 これには理由がある。ムウィートワ氏は、「同時期に発情すると、群れの繁殖力が高まると考えられます」という。同じ時期に子どもを産めば、お互いに授乳したり、子守りをしたり、子どもたちを天敵から守ったりできる。ムウィートワ氏は、ナショナル ジオグラフィックのエマージング・エクスプローラーのひとりで、大型ネコ科動物の保護プログラムである「ビッグキャッツ・イニシアティブ」から資金援助を受けている。(参考記事:「2016年エマージング・エクスプローラーに河江肖剰さんが選出」

 同時に生まれる子どもの数が多いほうが安全であれば、大人になるまで生存する個体の数は増えることになる。どの動物にとっても、体が小さくて弱い赤ちゃんは捕食動物に狙われやすいが、群れの赤ちゃんがすべて同じ時期に生まれれば、敵は一度に全部の赤ちゃんを食べることはできない。

 対して、年間を通して少しずつ子どもが生まれれば、捕食者は次々に途切れることなく獲物にありつくことができるだろう。

 しかし、それでも命を落とすライオンの子は多い。アフリカライオンの子どもの半数以上は、1歳の誕生日を迎えることができない。捕食動物、病気、放棄、餓死の脅威に加えて、群れの外からやってきたオスライオンに狙われることもある。

 オスのライオンは親離れして自立すると、群れを率いるオスライオンに戦いを挑む。侵入者が戦いに勝てば、その群れの子どもをすべて殺す。すると、群れのメスライオンはまた発情する。

ヒトの生理は同調しない

 同時に発情期を迎える動物はほかにもたくさんいるが、自分たちの子どもが死ぬと発情するという種は少ない。季節によって発情する動物がほとんどだ。野生にすむ多くの蹄(ひずめ)をもつ哺乳類は、春にのみ出産する。オスのシカのテストステロン(男性ホルモン)は秋にピークを迎え、その間にメスをめぐって戦い、交尾する。メスは冬の間妊娠し、5~6月に出産する。気候が温暖な時期なので、赤ちゃんは生き残りやすい。(参考記事:「【動画】発情期のヘラジカ、住宅地で迫力のガチンコ対決」

 もしもライオンのメスに生理があったなら、群れの中のメスライオンたちは生理周期がほぼ一緒になるのだろうが、ライオンでは定期的な排卵は起こらない。人間のようにわかりやすい生理があるのは、他の霊長類や一部のコウモリ、齧歯類(げっしるい)のみである。(参考記事:「薬指の長さは性ホルモンが決定」

 人間でも、一緒に暮らしている女性の生理が同調するという根強い都市伝説がある。この話は、寮などに暮らす女性たちの生理周期が重なるというマーサ・マクリントック氏による1971年の研究に端を発して流行したが、その後に発表されたいくつかの研究によって、いまでは信用されなくなっている。(参考記事:「ヒトは無意識に異性を「嗅ぎ分ける」」

 2006年にゼンウェイ・ヤンとジェフリー・C・シャンクの両氏は、マクリントック氏らの研究結果も含めて統計的な検証を行い、一緒に住んでいる女性2人の生理周期が重なる確率は、他のどの女性と重なる確率とも変わらないことを明らかにした。

 生理周期の長さは女性によって少しずつ違うので、2人の女性の周期を長いこと追っていれば、いずれは重なることもある。

「不規則なリズムと、周期が異なるリズムが重なり合う数学的なものに過ぎません」とシャンク氏は言う。「何かが一致するときは気づきやすいですが、一致しないときには気づきにくいのが人間の性です」

 生理は栄養を失い、ほかの捕食者を引きつけるため、ライオンの子どもたちはさまざまな危険に直面することになる。少なくともライオンのメスには、なくて幸いの生理なのだ。

文=Kristin Hugo/訳=ルーバー荒井ハンナ

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