世界中のサンゴ礁でサンゴが死んでいる。その原因は、エル・ニーニョや気候変動による海水温の異常な上昇だ。(参考記事:世界最大のサンゴ礁で大量死、豪政府が緊急対応)
海水の温度が上昇すると、サンゴの白化と呼ばれる生体反応が起こることは昔から知られていた。サンゴは暖かくなった海水からストレスを受けると、共生して餌をもたらしてくれる藻類を放出する。それによってサンゴは真っ白になり、餓死の危機に直面する。
今回、オーストラリアの科学者グループが、この恐ろしい“断末魔の苦しみ”を映像にとらえた。自然環境を再現した水槽にパラオクサビライシ(Heliofungia actiniformis)というサンゴを入れ、熱を加えて撮影したものだ。
映像からは、サンゴが藻類を放出する様子がよくわかる。通常のサイズの3.4倍まで体を膨らませ、微小な有機物を吐き出しつつ急激に縮む。このプロセスは4~8日間かけて起こっており、タイムラプス動画で見ると、この収縮が起きるたびにサンゴの色が薄くなるのがわかる。(参考記事:色鮮やかに光るサンゴを発見、深い海なのになぜ?)
短期的に見れば、白化自体にはメリットもある。
「サンゴに熱のストレスがかかると、共生する藻類をすばやく放出します。これによって、海水温が異常に上昇した場合でも、パラオクサビライシの生存率は大きく上がります」。プレスリリースにそう記しているのは、調査にあたった科学者の一人、ルーク・ナスダーフト氏だ。
海水の温度が上がると、時間とともに、共生する藻類が有毒化する。そのため、藻類を放出することによって、サンゴは生き延びることができる。しかし、そのまま海水温が下がらず、サンゴに新しい藻類が住みつかなければ、白化したサンゴはやがて死んでしまう。(参考記事:46カ国でサンゴ礁の大調査、意外な傾向が判明)
サンゴのストレスの兆候はすでに世界中に現れている。4月には、有名なオーストラリアのグレート・バリア・リーフの最大93%で白化が見られることを示す地図が作成されている。(参考記事:グレート・バリア・リーフの93%でサンゴ礁白化)