中国の月面探査車「玉兎」、稼働を停止

「さよなら、月のうさぎ」中国のSNS上では10万件の大反響

2016.08.10
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

嫦娥3号が2013年12月23日に撮影した、4枚の写真からなるモザイク画像。探査車「玉兎」の右側のソーラーパネルが、傾いた日光をうまくキャッチできるように少し下向きに調整されている。(PHOTOGRAPH BY CHINESE ACADEMY OF SCIENCES/CHINA NATIONAL SPACE ADMINISTRATION/THE SCIENCE AND APPLICATION CENTER FOR MOON AND DEEPSPACE EXPLORATION/EMILY LAKDAWALLA)
[画像のクリックで拡大表示]
 月のうさぎに、おやすみを言う時が来たようだ。ソーシャルメディアを通じて多くの人に愛された月面探査車「玉兎(ぎょくと)」が、最後の時を迎えたのだ。

 中国の国家国防科技工業局は8月3日、玉兎が稼働を停止したと発表した。月探査機「嫦娥(じょうが)3号」とともに月面に到達してから、2年以上が経過していた。

 月面で活動している間、玉兎は中国のソーシャルメディアで情報を発信し、多大な人気を博してきた。中国科学院は、ミニブログ「微博(ウェイボー)」にアップされた玉兎からの別れの挨拶に、10万件近い反応が寄せられたと述べている。

月面で最も長く活動

 月の仙女とそのペットである兎にちなんで名づけられた嫦娥3号と玉兎は、2013年12月、「雨の海」と呼ばれる月の北部にある海に着陸した。これにより中国は、ソ連(現ロシア)、米国に次いで月面への軟着陸を成功させた3番目の国となった。(参考記事:「中国月面着陸までの37年の空白」

 玉兎による月面ミッションは、すべてが順調だったわけではない。2014年2月には、月の夜の厳しい寒さにより、一度は活動停止状態に陥った。数週間後、玉兎は息を吹き返し、地球にデータを送信する機能は回復したが、走行はできない状態となった。

 それでも通信機能が生きていたことにより、同機は2015年10月、月面で最も長く活動した探査車となったと、科学誌『New Scientist』にジェーコブ・アーロン氏は書いている。(参考記事:「探査車が見た火星」

 玉兎から地球に送信されたデータは100本以上の学術論文に使用され、月の地質研究に寄与したのみならず、米国やソ連のミッションでは見つかっていなかった新しい種類の月の岩石の存在を明らかにした。(参考記事:「月が誕生した意外な経緯」

 一方、嫦娥3号に搭載された機器は、着陸から2年以上がたった今でも、月面にある唯一の望遠鏡を含め、順調に稼働を続けている。その嫦娥3号には、じきに仲間が加わる予定だ。中国は2017年に新たな探査機を月に打ち上げ、地球に試料を持ち帰る計画を進めているのだ。

「中国は最先端を行く国々の仲間入りを果たし、自らが宇宙大国であることを示したいと考えています」。米ディフェンスグループ社のアナリストで、カリフォルニア大学と契約しているケビン・ポールピーター氏は、以前のインタビューでそう述べている。「同時に中国は、これまで知り得なかった月に関する深い知識を、私たちに提供しているのです」

月面での邂逅

PHOTOGRAPH BY CHINESE ACADEMY OF SCIENCES/CHINA NATIONAL SPACE ADMINISTRATION/THE SCIENCE AND APPLICATION CENTER FOR MOON AND DEEPSPACE EXPLORATION/EMILY LAKDAWALLA
[画像のクリックで拡大表示]
 溶岩で覆われた「雨の海」に着陸してから3日後の2013年12月17日に、嫦娥3号が撮影したパノラマ写真。着陸地点は、月面車を初めて使用した有人月ミッション「アポロ15号」の着陸地点から786キロ離れた場所だ。(参考記事:「最後のアポロ、月面に残した跡」

探査の軌跡

PHOTOGRAH BY CHINESE ACADEMY OF SCIENCES/CHINA NATIONAL SPACE ADMINISTRATION/THE SCIENCE AND APPLICATION CENTER FOR MOON AND DEEPSPACE EXPLORATION/EMILY LAKDAWALLA
[画像のクリックで拡大表示]
 玉兎の曲がりくねったわだちをとらえたモザイク画像。2014年に撮影された。玉兎と嫦娥3号は、月の表側で最大級の盆地である「雨の海」に着陸した。「雨の海」は、約38億5000万年前に巨大隕石が衝突した際に、噴き出した溶岩によって形成された。(参考記事:「月の誕生物語に三つの新説、ネイチャー誌」

影を“自撮り”

PHOTOGRAPH BY CHINESE ACADEMY OF SCIENCES/CHINA NATIONAL SPACE ADMINISTRATION/THE SCIENCE AND APPLICATION CENTER FOR MOON AND DEEPSPACE EXPLORATION
[画像のクリックで拡大表示]
 太陽が背後から直接照りつけている状態で、玉兎が撮影した自身の影。2014年に撮影。

月のピラミッド

PHOTOGRAPH BY CHINESE ACADEMY OF SCIENCES/CHINA NATIONAL SPACE ADMINISTRATION/THE SCIENCE AND APPLICATION CENTER FOR MOON AND DEEPSPACE EXPLORATION/EMILY LAKDAWALLA
[画像のクリックで拡大表示]
 玉兎が撮影した6枚の画像から作られた「ピラミッド・ロック」のモザイク画像。嫦娥3号の着陸地点付近にある、この巨大な岩は、太古の衝突で現在ある場所に吹き飛ばされてきたものだ。

跳べないうさぎ

PHOTOGRAPH BY CHINESE ACADEMY OF SCIENCES/CHINA NATIONAL SPACE ADMINISTRATION/THE SCIENCE AND APPLICATION CENTER FOR MOON AND DEEPSPACE EXPLORATION/EMILY LAKDAWALLA
[画像のクリックで拡大表示]
 玉兎が2014年1月13日に撮影した、嫦娥3号と周辺の景色をとらえたパノラマ写真。このときから地球時間で2日後に、モーターユニットが故障し、玉兎は動けなくなった。

文=Michael Greshko/訳=北村京子

  • このエントリーをはてなブックマークに追加