ブルドッグが危機、遺伝的に似すぎ

139匹の遺伝子を解析、旧来のブリーディングに警鐘

2016.08.04
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イングリッシュ・ブルドッグは、世界的にきわめて人気が高い。だが、つぶれた顔、ずんぐりした体、だぶついた皮膚といった人間を虜にする特徴が、さまざまな健康問題をもたらしている。(Photograph by Nick Norman, National Geographic)
イングリッシュ・ブルドッグは、世界的にきわめて人気が高い。だが、つぶれた顔、ずんぐりした体、だぶついた皮膚といった人間を虜にする特徴が、さまざまな健康問題をもたらしている。(Photograph by Nick Norman, National Geographic)
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 力強さや頑強さを象徴するイヌだったブルドッグ。だが、100年以上にわたる選択的交配が、このイヌをひ弱にしてしまった。

 実は今、ブルドッグたちは呼吸や骨格、皮膚の障害をかかえている。しかも、多くの個体が自然に交尾したり出産したりできない。幼いうちに呼吸障害を起こすと、5歳以上まで生きられない可能性が高い。

 7月末、ブルドッグの遺伝子を初めて完全に解析した研究の結果が、オンラインジャーナル「Canine Genetics and Epidemiology(イヌの遺伝と疫学)」に発表された。この研究により、ブルドッグの遺伝的多様性がきわめて低いことが明らかになった。(参考記事:「犬の遺伝子を科学する」

 遺伝子が欠けているとなれば、ブリーダーの人々が願うように、自然に元の健康的な形質を取り戻すというのはかなりの難題だと、研究チームのリーダーである米カリフォルニア大学デービス校の獣医学研究者ニールス・ペダーセン氏は語る。

 米アメリカンケネルクラブによると、ブルドッグ、いわゆるイングリッシュ・ブルドッグは現在、米国では4番目に人気の高い犬種だという。(参考記事:「犬は人が思っているよりもずっと”人間らしい”」

139匹がほぼ同じゲノム

 研究者らは、合計139匹のブルドッグのDNAを採取、解析した。北米、ヨーロッパ、アルゼンチンで暮らす健康な個体のグループと、大学の動物病院に入院中のさまざまな疾患をもつグループだ。

 結果は衝撃的だった。健康で地域もばらばらな個体群なら、それぞれのゲノム構造は大きな違いがあるものと考えられていたが、ブルドッグの場合、どの個体もゲノムの大半の領域が同じだった。

 おまけに、ゲノムのなかでもイヌの免疫系を制御する領域に、やっかいな多様性の欠如が見つかった。研究者は、健康なイヌと疾患をもつイヌとで違いは見られなかったとしている。

 遺伝的多様性が低い理由の一つは、現代のブルドッグがわずか68匹の集団から始まっていると見られることだ。こうした小さな遺伝子プール(多様性)からスタートして、つぶれた顔、ずんぐりした体、だぶついた皮膚になるよう選択的に交配が重ねられたブルドッグは、さらに多様性を失ってしまった。(参考記事:「イヌ属で150年ぶりの新種見つかる」

愛嬌あるつぶれ顔と引き換えに

 ブルドッグにとって不幸なことに、その魅力となっているさまざまな身体的特徴も、疾患の原因だという。

 たとえば、その愛嬌のあるつぶれた顔。つぶれた顔になるよう交配すると、極端な短頭になり、頭蓋骨が短くなる。これが今、ブルドッグの死の最大の原因になっている。さまざまな呼吸器疾患や発熱が引き起こされるからだ。

 この不格好な頭は、繁殖にも影響する。ブルドッグの子犬は、母犬の産道を通れないので、帝王切開で生まれるしかない。ペダーセン氏は、ブルドッグの出産の80パーセントが人工受精と帝王切開だと見ている。

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「100~150年前がどうだったか考えてください」と、今回の研究には参加していない米コーネル大学獣医学部の遺伝学者アダム・ボイコ氏は言う。19世紀半ばの写真を見ると、ブルドッグは長い顔をし、尾はまっすぐで、皮膚のだぶつきもほとんどない。

「ブルドッグについて何度も意図的な選択をしてきたんですから、最初から、遺伝的多様性の低下という問題があったんです。さらに交配を重ねると、疾患が急増するかもしれません」

社会とブリーダーの協力が必要

 ブルドッグの子犬の人気が高まっているため、なかには3万ドル(約300万円)で取引される子犬もいる。より「愛嬌のある」ブルドッグを求める市場に、ブリーダーが応えていることはあきらかだ。

 だが、社会もブリーダーも協力して、ブルドッグの救済に取り組む必要がある。(参考記事:「犬肉祭りが中国で開催、食用に1万匹とも」

 アメリカンケネルクラブをはじめとする登録機関は、審査基準をゆるめることで、これに一役買うことができる。基準をゆるめれば、近縁の血統から新しい形質を得ることが可能になるだろう。

「ブリーダーは、自分たちには問題があると気づくべきです」と、ペダーセン氏は言う。(参考記事:「犬がテレビに夢中になる理由」

文=Aaron Sidder/訳=倉田真木

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