これまで見たことがないような、私たちのふるさとの姿がここにある。約150万km上空から地球の1年間をとらえたタイムラプス動画をNASAが公開した。
米国海洋大気局(NOAA)の深宇宙気候観測衛星「DSCOVR」が撮影した数千枚の写真からなる動画は、2015年6月に科学データの収集を始めた同衛星の運用1周年を記念して作られたものだ。高度な物理学のおかげで可能になった特別な視点によって、科学者は月の反対側を見たり、太陽風を観測したりできるようになった。(参考記事:「地球の前を横切る「月の裏側」の撮影に成功」)
DSCOVRは地球軌道を周回しているわけではない。地球の日の当たる側の上空150万kmに位置する、地球と太陽の引力が釣り合うラグランジュ点1に静止している。この固有の駐機場にあるDSCOVRは、世界初にして唯一の地球観測専用の探査機である。(参考記事:「ここがすごい!ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」)
DSCOVRは、地球の特定領域を何時間も追跡できるため、火災による煙や火山噴火のほか、さまざまな大気現象の監視が可能だ。これに対し、他の地球観測衛星はDSCOVRより何千倍も近くに位置しており、1日に1回しか特定の領域を撮影できない。(参考記事:「森林火災が地球におよぼすこれだけの影響」)
また、150万km上空から観測すると、太陽に対して地球が傾きを変える様子がわかる。つまり、北極や南極を観察できる時期があり、科学者が南極上空のオゾンホールを詳しく調査できるようになった。(参考記事:「南極のオゾンホール縮小を初めて確認」)
DSCOVRのEPICカメラ(地球多色撮像カメラ)を監督しているNASAの科学者ジェイ・ハーマン氏は、「DSCOVRの大きな特徴は、日の出から日の入りまでのデータを得られることです。おかげで私たちは実質的に地球全体の流れを見ることができます」と述べている。(参考記事:「宇宙に膨らむイヌの顔、S308」)
さらにDSCOVRは、近赤外線から紫外線までの10の波長での撮像が可能だ。多様な画像を撮ることで、気候パターンの把握に重要である雲の高さの変遷や、オゾン層の変化などを追跡できるようになった。(参考記事:「空から地球を診断する」)
DSCOVRがこれまでに実現してきた科学を考慮すると、同プロジェクトがかつて深刻な議論の的であったことが驚きですらある。1998年に当時のアル・ゴア副大統領が打ち上げを提案してから、政治的な行き詰まりにより何度も延期を繰り返し、打ち上げは永遠にないのではないかと言われたこともあった。衛星は何年も保管された後、ようやく2000年代後半に改装が行われた。
プロジェクトの立ち上げから同宇宙船に携わってきたハーマン氏は述べた。「飛ぶ姿が見られて感無量です。1998年から2016年は、長い待ち時間でした」