太陽系外の岩石惑星に大気、初めて確認

ハッブル宇宙望遠鏡で2つの惑星を同時観測、生命の可能性も

2016.07.21
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ガス惑星の可能性を否定

 観測データは、トラピスト1bと1cが、木星のように水素を主成分とする厚い大気を持っている可能性は低いことを示していた。たいして重要な知見ではないように思われるかもしれないが、ガス惑星の可能性を否定できたことにはいくつもの意味がある。

 まずは、岩石惑星である可能性を示したことだ。当初の観測では惑星の質量の範囲しか分からず、直径は不明だったので、科学者たちは惑星の組成と密度を推測するしかなかった。今回の観測により厚い大気がないことが明らかになったことで、高密度の岩石惑星である可能性が高まった。

「惑星が『小さなガス惑星』でないことが分かったのは良いことでした。ガス惑星では生命は居住できないからです」とデ・ウィット氏。惑星に厚い大気がないならば、火星や金星や地球と同じように、高密度の大気にしっかり包み込まれているのだろう。

似ているのは地球か金星か?

 惑星に大気があるとして、具体的にどのような大気であるかはまだ謎である。そして、ガスや蒸気の成分は、惑星の温度に大きな影響を及ぼす。このことは、高密度の二酸化炭素の大気を持つ金星が、水星よりも太陽から遠いにもかかわらず太陽系で最も高温の惑星になっていることを考えればすぐに分かる。

 一部の科学者は、トラピスト1の惑星は地球よりは金星に近いかもしれないと考えている。

 米コーネル大学のリサ・カルテネッガー氏は、「研究チームがこれらの惑星について、地球に似ているとは言わず、岩石惑星だろうとしか言っていないことに注意してください」と言う。彼女自身は、金星をさらに極端にしたような天体を考えている。「おそらく、金星を超高温にしたような天体でしょう。太陽系にはないタイプの、非常に興味深い惑星です」

 研究チームは、この惑星の大気の大部分が水蒸気である可能性も示唆しているが、その場合は生命にとって致命的だ。なぜなら、主星であるトラピスト1が、可視光ではなく近赤外線を主に放射しているからだ。

「水蒸気は近赤外線をよく吸収し、温室効果ガスとして惑星を温めます」とコッパラプ氏。惑星の大気に大量の水蒸気が含まれている場合、「惑星は地球よりかなり高温になっているでしょう。そうでなければ本当に嬉しいのですが」と彼は言う。(参考記事:「NASAのケプラー衛星、複数の地球型惑星を発見」

次の機会を待つ

 トラピスト1の2つの惑星の居住可能性についての結論はまだ出ていないが、研究チームはさらなる研究の価値があると確信し、北半球の空でも超低温星のまわりの惑星を探索したいと考えている。その際には、2018年に打ち上げが予定されているジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡も使いたいという。

 ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡はNASAの最大の宇宙望遠鏡で、生命が居住できる可能性のある系外惑星をより詳細に観測することができる。

 米カリフォルニア大学サンタクルーズ校の天文学者ジョナサン・フォートニー氏は、超低温の恒星のまわりの岩石惑星についてはまだ何も分かっておらず、半世紀前に金星の観測が始まった頃の状況によく似ていると言う。当時は、金星が地球と同程度の大きさであることは分かっていたが、地球に似ているかどうかは不明だった。

「金星が地球に似ているかどうかをめぐっていろいろな推測が出ましたが、詳細な観測データが得られたことで論争に決着がつきました」。結局、金星は地球とは似ても似つかない惑星だった。トラピスト1の惑星系を再び観測できるようになる数年後まで待たされるのは残念だが、惑星はどこにも逃げない。

 米イェール大学のグレッグ・ラフリン氏は、「私たちが秘密の鍵を開ける能力を身につけるまで、惑星はさえない星のまわりをいつまでも回っています」と言う。惑星の実際の様子についてはあらゆる可能性が考えられる。「もしかすると、惑星は緑に包まれ、呼吸できる大気があるかもしれません。ただ、現段階ではなんとも言えないのです」(参考記事:「太陽系から最も近い太陽系外惑星が消えた!」

文=Nadia Drake/訳=三枝小夜子

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