ポケモンGO自然の中でも、国立公園関係者が注目

米国の国立公園にも出没中、ただし安全第一で

2016.07.20
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米国ニューヨークのセントラルパークでポケモンをキャッチするプレーヤー (Photograph by Victor J. Blue, Bloomberg, Getty)
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 スマートフォンを両手で大事そうに抱え、とりつかれたように画面を見ながら街を歩く人がいる。ある人はイヤホンをつけながら、ある人は、まるで現実世界のことなど、すっかり忘れてしまったかのように。

 ポケモンGOのプレーヤーたちだ。彼らが目指すことはただ一つ。すべてのポケモンを捕まえることだ。

 十代の少女たちから警官まで、誰もがこの大人気の拡張現実(AR)に夢中になり、ヒトカゲ、ゼニガメ、フシギダネといったポケモンたちを探し回っている。ポケモンGOは米国史上最も人気の高いゲームにランクされた。そしてこの現象は、文明に支配された都市だけでなく、ゲームにとっては未踏の地といえる国立公園にまで広がりつつある。(参考記事:「『研究室』に行ってみた。理化学研究所 代替現実 藤井直敬」

大自然の中でポケモン探し

「仮想的に体験するか、リアルに体験するか、公園の楽しみ方には正反対の方法があります」。米国モンタナ州にあるグレイシャー国立公園の広報担当、ティム・レインズ氏はメールでそう書いてきた。「しかし、その二つを組み合わせるという選択肢が生まれたのです」(参考記事:2008年2月号「北米大陸の王冠 グレイシャー国立公園」

 緑豊かな木々や山岳地帯がある国立公園では、携帯電話やWi-Fiの電波を受信するのは容易ではない。そのため、ワシントン州オリンピック国立公園で広報担当を務めるバーブ・メインズ氏は、園内でポケモンGOをプレイする人々がいるとは聞いていない。メーン州のアーカディア国立公園も同じだ。(参考記事:2004年7月号「大自然のチャンピオン:オリンピック国立公園」

 しかし、Wi-Fiがあるビジターセンターの中には、プレーヤー同士がポケモンを戦わせてレベルアップできる「ポケモンジム」になっている場所もある。レインズ氏は7月12日にグレイシャー国立公園のアプガー・ビジターセンターの近くで、最初のポケモン、フシギダネを捕まえた。

 ノースカロライナ州とテネシー州にまたがるグレート・スモーキー・マウンテンズ国立公園で監視員兼ガイドを率いるリンダ・ドーセット氏は、地形の関係で園内では携帯電話がつながりにくいと言う。しかし、同氏たちは、プレーヤーが便利なアイテムを集めることができる「ポケストップ」という場所が少なくとも5カ所、そしてポケモンジムも1カ所あることを確認している。また、ズバットやゼニガメなど、12匹以上のポケモンも見つけた。(参考記事:2006年8月号「スモーキー・マウンテンズ国立公園」

「米国国立公園局は設立100周年を迎えます。その記念として取り組んでいるテーマの中に、次世代の来訪者やサポーターを増やし、つながりを深めることがあります」とレインズ氏。「位置情報を使うゲームは、新たな来訪者を引きつける、またとないチャンスです」

 ポケモンGOには教育的な側面もある。グレート・スモーキー・マウンテンズ国立公園のマウンテンファーム博物館には、ポケストップが3カ所ある。ポケストップでは、その場所の歴史を説明するメッセージが画面上に現れ、アイコンをタップして詳しい情報を見ることができる。また、歴史的な場所でのポケモンの目撃情報を集めた「ポケモン・アーケオロジー」というツイッターアカウントまで登場している。

「ポケモンGOで、人々は戸外へと出るようになります。公園に来たことがない人たちに足を運んでもらえるチャンスです」とドーセット氏は言う。

 ポケモンはカリフォルニア州のヨセミテ国立公園にもやって来た。広報担当を務めるスコット・ゲディマン氏の息子、12歳のスペンサー君は、7月14日にヨセミテ・ビレッジ周辺で5時間近くポケモンGOをプレイした。その日に出会ったのは、ポッポ、ニドラン、ピッピなど、40匹ほどのポケモンだ。父親の事務所ではラッタも見つけた。(参考記事:VISIONS「ヨセミテ」

 スペンサー君はどこへ行っても、ポケモンGOをプレイする人たちを見かけた。ポケモンジムになっている教会や郵便局、売店などでは、たくさんの家族連れが一緒に遊んでいた。

「本当にすごいゲームですよ。わかりやすいし、よくできている」とスペンサー君は言う。

落とし穴にご注意を

 しかし、プレーヤーが増えるにつれて、けが人も増加している。ポケモンを追いかけているうちに、転倒したり、障害物に衝突したりしてしまうのだ。しかし、今までのところ、国立公園で何らかの規制を設けようという動きは出ていない。

 アリゾナ州グランドキャニオン国立公園の広報担当、エミリー・デービス氏は、ポケモンを追いかけるときは周囲に十分注意するよう監視員が声をかけているという。

「新しいルールを設けることは考えていません。安全上の注意は、このゲームが流行する前と変わりませんから」とドーセット氏。

 いずれにしても、ポケモンGOは、テクノロジーとはあまり縁がなかった歴史的な公園などを探検する新しい手段になる可能性を秘めている。米国ワシントンにあるナショナルモールとメモリアルパークでは、ガイドたちが“キャッチ・ザ・モール ポケモンハント”というイベントを開くことを発表している。(参考記事:VISIONS「ウエスト・ポトマック公園」

「訪問者の安全に気を配るだけでなく、荘厳な場所には敬意を払い、立ち入り禁止区域には入り込まないようお願いしています」。国立公園局の広報責任者、トム・クロッセン氏はメールでそう教えてくれた。

 4人の大統領の彫像がならぶラシュモア山に、ピカチュウが現れる日が来るかもしれない。(参考記事:大統領の日とラシュモア山の彫像

文=Elaina Zachos/訳=鈴木和博

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