シロナガスクジラが漁具にからまる、救助難航

ホエールウォッチングの船が発見、カリフォルニア沖

2016.06.30
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カリフォルニア沖で漁業用の仕掛けロープが体に巻きついてしまったシロナガスクジラ。

 体長24メートルのシロナガスクジラ(学名:Balaenoptera musculus)にからみついたカニ漁のロープを外すという前代未聞の救助作戦が、米国カリフォルニア州の海で繰り広げられている。

 同州オレンジカウンティの沖合約5キロの海域でロープがからみついたクジラが発見されたのは、6月27日の午後のこと。最初に発見して通報したホエールウォッチングツアーの船によると、クジラの体には、30~60メートルのカニ漁のロープと浮きが巻きついている様子だったという。(参考記事:「座礁したクジラの胃から自動車部品」

 米国海洋大気局(NOAA)の広報担当者マイケル・ミルステイン氏によると、カニ漁のロープはクジラの尾から頭部へ向かってからみつき、おそらくは口の中を通って、胸びれの周囲にも巻きついている。また、ロープにつながれた仕掛けカゴも一緒に引きずっているようだ。

 同日のうちに救助隊がクジラのすぐそばまで近づいたが、巨大な体に巻き付いたロープを切断することはできなかった。クジラが急速に疲弊している様子を見せたため、その日の作業は中断することにした。

 28日朝、救助隊はクジラが再び現れるのを待った。当初は発信器付きの浮きをクジラの体に取り付けたが、ロープがからまって切れた場合に失われる恐れがあるとして外された。

 救助作戦はNOAAが指揮を執り、ボランティアチームの助けを借りて実施されている。また、漁船やホエールウォッチングの船も、クジラの誘導に協力している。

 南カリフォルニア沿岸は、シロナガスクジラの主要なエサ場となっているため、毎年この時期には多くのクジラがやってくる。しかし、ロープにかかるという事故は珍しい。

 シロナガスクジラの研究に携わる米オレゴン州立大学の海洋生態学者リー・トーレス氏は、「シロナガスクジラは、通常ならもっと陸から離れた沖にいるものです。一方、カニ漁のロープはもっと岸に近いところに仕掛けられるのが一般的です。しかし最近では、この双方が出会ってしまうというのはよくあることのようですね」と説明する。(参考記事:「【動画】授乳中と思われるシロナガスクジラの親子」

 NOAAのミルステイン氏も珍しい事例であると話し、カリフォルニア州沖でこのようにシロナガスクジラの救助を試みるのは前例がないと語る。今回のケースでは、クジラの体が大きく、ロープが複雑にからみついているため、救助活動が特に困難であるという。頭部に巻きついたロープを外すために、クジラに気づかれないように近づくのも難しい。

 トーレス氏も「大変な作業です。クジラはとにかく力が強いですから、船が近づいても怯えたりせず、落ち着いていてもらわなければなりません。ロープも、正しい場所を狙って切断する必要があります」と話す。(参考記事:「座礁クジラ、救出の難しさ」

 ロープがからみついてしまうと、クジラにとっては危険だ。ロープをまとったまま長期間泳ぐこともあるが、体にかせをはめているようなもので、やがてはケガや衰弱の恐れがある。

 特に、体を激しく動かす捕食行動への影響が懸念される。シロナガスクジラは、加速しながら泳いでオキアミの群れを一気に飲み込む突進採餌という方法でエサを捕るが、巻き付いたロープに身体の自由を奪われていては、それも上手くできない。

 体長30メートル、体重は150トンにも達するシロナガスクジラは、世界最大の動物と考えられている。1900年代初めには乱獲により個体数が減少していたが、1973年に米国で制定された絶滅危惧種保護法の保護下に置かれたこともあって、近年ではその数が回復している。(参考記事:「シロナガス個体数、船舶衝突の影響は?」

 近年シロナガスクジラは、船の衝突、海中の騒音(音波探知機、船、地震調査などによるもの)、漁業用の仕掛けにからまる事故など、主に人間活動による脅威にさらされている。(参考記事:「【動画】ザトウクジラが桟橋前で大口開け食事 」

文=Aaron Sidder/訳=ルーバー荒井ハンナ

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