「ロシアの岩塩坑」という言葉から、息をのむほど美しい場所を連想する人はそうはいないだろう。ただし、シルビナイトの採掘坑を見たことがあるなら話は別だ。
シルビナイトとは岩塩とカリ岩塩の混合物。その鮮やかな色あいのおかげで、ロシア中西部のベレズニキにある採掘坑の壁は、まるで複雑な模様の織物に覆われているかのように見える。(参考記事:「核廃棄物の埋設地になったドイツの岩塩坑」)
シルビナイトは、オーストラリアと南極を除くすべての大陸で発見されている。鉱脈があるのは、太古に海に覆われていた場所だ。
シルビナイトに含まれるカリウムは、19世紀から肥料として広く用いられてきた。ある種の果物の皮を厚くする効果を持っており、カリウムがなければマンゴーやバナナなどは、船で海外へ輸送される負担に耐えられなかっただろう。世界の食料品貿易に多大な影響を及ぼしてきたわけだ。(参考記事:「ようこそ、パリの地下世界へ」)