ナイルワニは大きいもので体長6メートルにもなる。(PHOTOGRAPH BY BEVERLY JOUBERT, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
ナイルワニは大きいもので体長6メートルにもなる。(PHOTOGRAPH BY BEVERLY JOUBERT, NATIONAL GEOGRAPHIC CREATIVE)
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 鋭い歯が並んだあごに、うろこに覆われた長い尾。近年フロリダに現れた外来生物は、アメリカ在来の親戚たちと変わらないように見えるかもしれない。だが、専門家によれば、ナイルワニは米国にもともといるワニよりも危険だという。(参考記事:「【動画】ワニの共食いシーンを目撃、米国」

 2000年以来、フロリダ州内の沼地で計4匹のナイルワニ(Crocodylus niloticus)が目撃されている。現生のワニ目で2番目に大きなナイルワニは、体長6メートルに達することもあり、カバから人間まで何でも飲み込む。原産地のアフリカでは「マンイーター」(人食い)と呼ばれ、統計データもそれを裏付けている。(参考記事:「ワニの噛む力は地球で最強、実測で証明」

 ワニによる死傷事故情報を世界中から集めているデータベース「CrocBITE」によれば、2000年以降、アメリカアリゲーター(Alligator mississippiensis)とアメリカワニ(Crocodylus acutus)による死者数は33人。一方、同じ期間のナイルワニによる死者数は268人に上る。

「一般に、ナイルワニはアメリカアリゲーターやアメリカワニよりずっと攻撃的だと考えられています」と話すのは、米エール大学林学環境学スクールの博士研究員でワニ目が専門のアダム・ローゼンブラット氏だ。

 フロリダで見つかった4匹のナイルワニに関する研究結果は、学術誌「Herpetological Conservation and Biology」にこのほど掲載された。それによると、幸い4匹はまだ成長途上であり、繁殖している証拠もないという。

 したがって、ナイルワニの危険性を今すぐ心配する必要はないだろうとローゼンブラット氏は話す。

「ですが、決して甘く見てはいけません」と同氏は言う。「外来種が野放図に侵入するのを許せば何が起こるか、実例はあちこちにあります。フロリダに持ち込まれたビルマニシキヘビもその1つです」

どう違う、アリゲーターとクロコダイル

 ナイルワニ、アメリカアリゲーター、アメリカワニはいずれも鋭い歯を持つ大型の爬虫類で、水辺で泳ぐ際には出会わないよう注意しなければならない。一方、この3種には異なる点も多い。

 アメリカアリゲーターはナイルワニよりずっと小さく、通常、体長は最大約5メートル。こう聞いても「小さい」とは全く思えないかもしれないが、ナイルワニは最も大きなものでキリンの体高を上回ることがあるのだ。(参考記事:「世界最大のワニ死亡、フィリピン」

 もう一つの大きな違いは、頭の形だ。アリゲーターは頭の横幅が広く、比較的丸みを帯びている。一方、ナイルワニやアメリカワニが属するクロコダイル科の頭部は幅が狭く、形も三角形に近い。実際、アメリカワニの頭部はアメリカアリゲーターよりもナイルワニによく似ている。(参考記事:「【動画】アリゲーターとクロコダイルの見分け方は?」

 生物学的にも大きな違いがある。米サウスカロライナ州、クレムソン大学森林・環境保護学科の博士課程に在籍するアビー・ローソン氏は、ナイルワニはアメリカアリゲーターよりも産卵数が少ないと話す。

強力な牙で獲物を狩るナイルワニ 体重1トンにも達するナイルワニは、アフリカの川に君臨する頂点捕食者だ。しかも、咬む力は動物界で最も強い。

「この点は朗報です。ナイルワニが米国で新たな個体群を確立するのは難しいということになりますから」とローソン氏は話した。

ナイルワニはどこから米国へ?

 フロリダで見つかったナイルワニの遺伝子検査では、4匹中の2匹(あるいは3匹目も)が南アフリカのナイルワニに最も近いことが判明している。

 ナイルワニがどんなルートでフロリダにたどり着いたのかはまだ分からない。が、調査に当たった研究者たちはいくつかの推測を立てている。

 過去10年の間に、フロリダにはナイルワニが数匹持ち込まれている。中には合法に輸入され、同州のディズニー・アニマル・キングダムなどの場所で展示されているものもある。だが、それ以外はペット取引で持ち込まれ、放されたり逃げ出したりして野生化したものらしい。(参考記事:「アリゲーターとクロコダイルは木に登る」

 また、ワニ目の外来種がフロリダ州で見つかったのはこれが初めてではない。

 1960年以降、アフリカクチナガワニ、コビトカイマン、ブラジルカイマン、メガネカイマンの少なくとも4種が研究者によって確認されている。(参考記事:「復活するワニの楽園」

 そうは言っても、フロリダは人気のリゾート地。「水辺に近づくな」というのは無理なことかもしれないが……。

文=Jason Bittel/訳=高野夏美