糸でつないで子育てする古代の節足動物を発見

4億年前の化石から3Dモデルで再現、10匹もつながっていた

2016.04.07
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Aquiloniferの化石の断面。親の頭部とアンテナ状の付属肢、その親につながれた子どものうちの2匹(左上)。(PHOTOGRAPH COURTESY DEREK BRIGGS, DEREK SIVETER, DAVID SIVETER, MARK SUTTON AND DAVID LEGG)
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 わが子を見守るためなら、親はあらゆる手段を講じる。英国イングランドの岩の中から化石として見つかったある古代の無脊椎動物は、とりわけ奇妙な裏ワザを持っていた。凧を飛ばすように、子どもたちを糸で自分の体につなぎとめていたのだ。

 米エール大学の古生物学者デレク・ブリッグス氏の研究チームはこの新種を、トゲに覆われた外見からAquilonifer spinosusと名付けた。Aquiloniferは、4億3000万年前の英国に生息していた水生の節足動物である。節足動物には、昆虫類、クモ類、甲殻類などが含まれる。

 研究チームが成体の化石の3Dモデルを作成したところ、驚いたことに長い糸で成体につながれている10匹の小さな無脊椎動物の赤ちゃんらしきものが浮かび上がってきた。「成体の姿を再現しようと化石を処理して初めて、小さな子どもたちが見つかったのです」と、ブリッグス氏は語る。(参考記事:「謎の古代生物タリーモンスターの正体がついに判明」

 思いがけず姿を現した化石だが、最初は何なのかわからず、チームは3つの仮説を立てた。宿主をむしばむ寄生生物か、Aquiloniferの体に乗って移動するヒッチハイカーか、それともAquiloniferの子どもなのか。

最も有力な説

 しかし、寄生生物説はすぐに却下された。小さな生物は長い糸でAquiloniferのトゲにつながれている。この状態では、宿主の体をむしばむことは難しい。

 他の種がヒッチハイクしていたとも考えにくい。タダ乗りされたAquiloniferが、そのままにしておくはずがないだろう。「長い前足か何かを使ってすぐに切り離していたでしょう」と、ブリッグス氏。(参考記事:「キツツキに乗って空を飛ぶイタチ、写真はホンモノ?」

【動画】Aquiloniferの化石の3Dモデル(Derek Briggs、Derek Siveter、David Siveter、Mark Sutton、David Legg)

 そういうわけで、よりほほえましい3つ目のシナリオが最もあてはまるだろうと研究チームは考えた。大きな生物と小さな生物は、体の構造が似ているだけでなく、互いに結ばれている。つまり、小さな化石はAquiloniferの子どもであると考えるのが自然である。この研究は、学術誌「Proceedings of the National Academy of Sciences」オンライン版に4月4日付けで掲載された。

「化石でも現生の節足動物でも、このような育児行動を見るのは初めてです」。糸でつなぐことで、子どもたちを天敵から守っているのだろうと、ブリッグス氏は付け加えた。

 赤ちゃんたちは、ただつながれたまま身を任せていたわけではない。親が移動する間、自分でも付属肢を動かして上昇したり体を操作し、プランクトンを捕まえて食べていたと考えられる。

熱心な子育て

 化石の情報だけを頼りに動物の習性を推測するのは簡単なことではないと、米カリフォルニア大学リバーサイド校の古生物学者ナイジェル・ヒューズ氏は言う。「けれども、納得のいく研究論文だと思います。糸でつながれた子どもたちが食べ物を手に入れる方法についての解釈は想像の範囲を超えませんが、あながち間違いではないと思います」

 この発見により、カサコソ這い回って気味が悪いという節足動物の印象も少しは変わるかもしれないと、ヒューズ氏は期待する。「彼らは一般的にあまり好感度が高いとは言えませんからね。映画などに出てくる不快なエイリアンは、なぜかほとんどが節足動物のような姿をしているでしょう」(参考記事:「クモの進化の謎解く鍵、3億年前の化石で新種発見」

 しかし実際には、「子育ての戦略など、感心させられることも多いのです」という。子どもたちを引き連れ、原始の海を遊泳していたAquiloniferもまた、育児に熱心な節足動物というイメージアップに一役買うことになりそうだ。(参考記事:「絶滅したカエルを140年ぶりに再発見、卵で子育て」

文=Brian Switek/訳=ルーバー荒井ハンナ

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