マナティー過去最多6000頭超に、米フロリダ

絶滅危惧種の指定解除を検討へ

2016.03.09
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米国フロリダ州にあるスリーシスターズ・スプリングズを泳ぐアメリカマナティー。絶滅が危惧されてきた水生哺乳類だが、生息数が回復しつつあるようだ。(Photograph by Brian Skerry, National Geographic Creative)
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 米国フロリダ州の水域に、少なくとも6250頭のマナティーが生息していることが航空調査で確認された。一帯には、多数のマナティーが集まる場所が複数存在する。年に1回行われる航空調査の結果として、フロリダ州魚類野生生物保護委員会が発表した。今回の数字は、これまで最多だった2010年の5077頭という記録を塗り替えるものだ。

 調査結果はあくまで「最低でもこの程度はいる」という数であり、その増減は生息数の変化を反映するとは限らない。だがマナティーの生息数が回復傾向にあることをうかがわせるデータはこのところ増えている。今回の数字は、それをさらに裏づけるものとなるだろう。(参考記事:「大群発見、ベリーズのマナティー調査」

 アメリカマナティーは現在、米国の絶滅危惧種法で保護の対象となる「絶滅危惧種」(endangered)に指定されている。だが2016年2月、米国魚類野生生物局は、アメリカマナティーについて絶滅危惧種の指定を解除し、その位置づけを「生存を脅かされている種」(threatened)に変更することを提言した。(参考記事:「動物大図鑑 マナティー」

 魚類野生生物局が進めている「フロリダマナティー回復計画」のコーディネーター、ジム・バレード氏によると、提言の内容は4月7日まで一般に公開され、パブリックコメントを募集中。魚類野生生物局は、2017年中に最終的な決定を公表する予定だという。

 検討の結果、マナティーの位置づけが絶滅危惧種でなくなったとしても、国による保護政策や関連する法律は、現状のまま維持される。

「指定を見直したとしても、保護活動の重要性に変わりはありません。フロリダを象徴する生物であるマナティーの保護を確実なものとするために、さらなる努力が続けられるでしょう」

保護活動の成功例となるか

 大きな体でゆったりと動くマナティーは、水草や海草、藻などを食べる草食の水生哺乳類。フロリダ沿岸で見られるアメリカマナティーは、メキシコ湾岸、カリブ海などにも生息している。それ以外に、アマゾンやアフリカに生息する種もいる。(参考記事:「アマゾンマナティーに会いに行く」

 船舶との衝突事故や、漁網に巻き込まれるなどのトラブル、生息環境の変化などにより、マナティーの生息数は、過去数十年間にわたって減少傾向にあった。アメリカマナティーが米国で絶滅危惧種に指定されたのは、1966年のことだ。

 現在マナティーの数が増えているのは、政府や行政機関、保護団体による長年の努力の成果だと、バレード氏は語る。「フロリダのマナティーは将来も安定した数を維持できるはずだと信じています」

 マナティーの保護区では、法律による規制のおかげもあって、船の事故によるマナティーの死亡やけがは減少している。(参考記事:「マナティー 保護か観光か」

研究チームの意外な苦労

 穏やかで好奇心旺盛なマナティーは、野生動物のなかでは扱いやすそうに見える。だが、その観察には一筋縄ではいかない難しさもある。

 ナショナル ジオグラフィック協会では、動物に装着する小型カメラ「クリッターカム」を駆使して、さまざまな調査や研究を行ってきた。だが、マナティーにカメラを取り付けようとした研究チームは、思わぬ壁にぶつかった。

【動画】マナティーに小型カメラ「クリッターカム」を装着しようとした研究チームは、まさかの苦戦を強いられた。(解説は英語です)

 クリッターカムを使った遠隔撮影を行うカイラー・アバーナシー氏らの研究チームは、マナティーにこのカメラを装着するのは至難の業であることを思い知らされた。体形がずんぐりと丸みを帯びているうえに、体表はざらざらしていて吸盤なども使えない。

 設計とテストを3年間にわたって繰り返し、試行錯誤の末に、彼らはようやく、マナティー用の装着方法を編み出した。マナティーの尾びれの細くなった部分にゆるいハーネスをはめ、そこにカメラを取り付けて、マナティーの後方にカメラが浮かぶようにしたのだ。

 この技術を活用することで、マナティーの生態についての理解が深まり、彼らを守る助けになればと、アバーナシー氏は期待している。

【フォトギャラリー】フロリダのマナティー10点

文=Wajeeha Malik/訳=北村京子

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