夢の超音速列車ハイパーループ、試作機の段階に

デザインコンテストで米MITが優勝、この夏にいよいよ機体のコンペを開催

2016.02.26
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20カ国、120以上のチームによる超ハイレベルなコンペ

 マスク氏自身は、特定の企業を支持したり、独自のハイパーループシステムを作ろうとはしていないと話す一方、自らの構想が前進するよう望んでいる。そこで2015年の夏、スペースXはコンペを開催し、カリフォルニア州ホーソーンにある本社近くに1マイル(約1.6キロ)のテストトラックを建設すると約束した。

 コンペの開催に小躍りしたのが世界各国の学生たちだ。「デザイン・ウィークエンド」には、米国の27州に加えてインド、中国、南アフリカ、ドイツなど20カ国から120チーム以上、計1000人を超す学生が集まった。

 米運輸長官アンソニー・フォックス氏は基調講演で、「このコンペの素晴らしさの1つは、全員が勝者だということです。なぜなら、ここにいる誰もが未来へ向けた構想に関わっているのですから」と述べて参加者をたたえ、政府はイノベーションを後押しする必要があるとも付け加えた。

 出場チームは、ポッドを空中に浮かべるためのさまざまな方法を示してみせた。あるチームは、空気軸受(エアベアリング)を採用。エアホッケーのパックがテーブルの上を滑るのと同じ仕組みだ。また別のチームは、磁石を用いた。映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」から着想を得たHendoホバーボードも、この方法で地面から浮上している。マスク氏は前者の方式に傾いていたが、HTTとMITは後者を選んだ。(参考記事:「空飛ぶスケボー、空飛ぶバイクの時代がやってくる?」

「冷蔵庫用マグネットのように、磁石はずっと効果を保ち続けますから」とMITのメイヨー氏は言い、彼のチームが提案するポッドの底面には、アルミニウム製の走行路に対して下向きに磁石が付いていると説明する。

 メイヨー氏によれば、「スピードは出れば出るほどいい」。スピードが大きいほど、ポッドが浮く力に対する抗力は減る。1.6キロあるスペースXのテストトラックでは浮上時に少なくとも時速35キロが必要で、目標は時速386キロ。トラックが短いことを考え、ポッドには「フェイルセーフの」油圧ブレーキシステムを備えてある。

優勝したMITチームによる解説。ポッドのCGは38秒前後から。(説明は英語です)

 メイヨー氏は、MITのチームが1位を取ったことに若干驚いたと明かした。彼らの案はほとんど技術面にのみ工夫を凝らしていて、外見には労力を割いていなかったからだ。実際のポッドには乗客用の席を設けるとはいえ、仮想の設計ではそれすらなかった。

 このほか、上位から順にオランダのデルフト工科大学、以下米国のウィスコンシン大学、バージニア工科大学とカリフォルニア大学アーバイン校が高い評価を得た。スペースXは具体的な日程を決めていないが、このほか25チームが、2016年夏に最終テストトラックで競い合う。

「ここで得られた知見は、今後もオープンソースとして公開されます」と、スペースX社は自社のウェブサイト上で述べている。マスク氏は学生たちに対し、この先もハイパーループに関わるコンペをいくつも考えていると語った。

 他のチーム同様、MITの学生たちは、ポッドを作ってテスト地点まで運ぶための資金や寄付集めに奔走中だ。プロジェクトに必要な額の約10万ドルは得られると彼らは期待している。

 コンペに参加した多くは大学院生で、以前にさまざまな電気自動車を製作して学内で競ったり、エドガートンセンターを拠点に仕事をしたりした経験がある。だが、機械工学で修士号を取ってこの5月に卒業する予定のメリアン氏は、「スペースXのコンペのレベルは、他のコンテストより高かったです」と振り返る。

「誰も、僕たちがこんな課題に取り組むとは思っていませんでした」とメイヨー氏は言う。彼は春に卒業後、NASAのジェット推進研究所で働く予定だ。「このコンペはさまざまなことを学べる絶好の機会ですし、おそらくは輸送の未来を変える機会でもあると思います」

文=Wendy Koch/訳=高野夏美

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