ロブスターは正常位、海の中の仰天セックスライフ

クジラからホネクイハナムシまで、海は驚きの性生活にあふれている

2016.02.28
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ブダイ科の魚はメスとして生まれ、後にオスに変わる。「したがって、1匹の個体が2つの性を体験します」とハート氏。(PHOTOGRAPH BY TIM LAMAN, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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 時にロマンチックで、時に危険。想像以上に突飛でワイルドなセックスが行われている場所、それが海だ。

 サンゴ礁が専門の生態学者マラー・J・ハート氏はこのほど、新著『セックス・イン・ザ・シー(Sex in the Sea)』を出版。海洋生物たちの多彩なセックスライフ、汚染や乱獲などの脅威、そして健全な海を守る意義を述べている。

 特大サイズの精子から、ロブスターの優雅な前戯、そして海の生物の性生活が充実することの意味まで、ハート氏に話を聞いた。

――執筆を決めたきっかけは?

 パーティーである女性が言ったんです。「男性の体になって、男たちが何を考えているか分かればいいのに!」。それで私が「同感。ブダイになればできるのにね」と返すと会話が止まってしまい、私はこう続けました。「ブダイ科の魚は生まれたときはメスで、一定の体長になるとオスに性転換する。だから1匹の魚が、オスメス両方の性を体験するの」

ゴカイに似たホネクイハナムシ属のオスはメスよりもずっと小さく、研究者たちは当初、精子と勘違いしていた。(PHOTOGRAPH BY THE NATURAL HISTORY MUSEUM, ALAMY)
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 それを聞いた人たちは目を丸くしていました。それで、もう少し続けてみることにしたのです。「サンゴ礁で大物ばかり次々と釣り上げていると想像してみて。オスが全部いなくなって、すごく複雑なことになってしまう」(参考記事:「巨大魚ブダイの集団お見合いを発見、米研究チーム」

 その後、パーティーで私の話を聞いていた人が、別の出席者に「知ってた? 性転換する魚がいるんだって」と話すのが聞こえてきて、そうだ!と思いました。海はとびきり変わった性行動の宝庫です。セックスを取り上げて、面白いと思ってもらえれば、保護にもつながります。なぜなら、生物が繁殖行動に励めることが、究極的には持続可能性の鍵だからです。食料にしろ、海岸線を守る岩礁にしろ、人はみな海の豊かさに頼っています。その豊かさを促進しているのが、生物たちのセックスなのです。

 海を健全に保ちたいと願うなら、私たちは海を「安全にセックスできる場所」にしておく必要があるというわけです。(参考記事:「まとめ:生きものたちの愛の物語」

――なかでも特にロマンチックな生物は何でしょう。

 ロブスターです! 彼らの営みの前には、可愛いけれどちょっと変な前戯があるのです。例えば、「ほれ薬」のように互いの尿をかけ合ってから行為に至るのもそうです。またメスは大きなはさみを持ち上げてオスの体の片側を叩き、それからもう一方の側も叩くのですが、まるで何かの儀式のようです。こうして「私から離れないで、愛し合いましょう」と伝えているのです。

 このあとメスは脱皮し、体は柔らかく無防備になってしまいますが、相手のオスは彼女を優しく扱います。オスは足でメスを持ち上げて抱きかかえ、仰向けにして・・・・・・そして正常位で交わります。(参考記事:「左右の色がくっきり異なるロブスターが見つかる」

――パートナー探しで、最も苦労している海洋生物は?

 オスのマッコウクジラは、文字通り太平洋全域を泳ぎ回って交尾の相手を探します。音で方角を知り、おそらく何らかの信号を発して、自分の体格の大きさをアピールしています。ところが残念なことに、人間の活動による雑音、たとえば原油やガスの探査、船舶の航行音などに紛れてしまうこともしばしばです。そうして繁殖の相手と巡り合うのが難しくなっているのです。

 シロナガスクジラに関しては、ここ数十年で鳴き声が低くなりつつあるという調査結果があります。かつて、シロナガスクジラは乱獲により個体数が95%も減少しました。このため当時、彼らは「誰かいる?」と高い声を出さざるを得なくなっていたというのが研究者たちの見方です。音が届く範囲は狭くなりますが、近くにいれば大きく聞こえるからです。

 個体数が徐々に回復するにつれて、シロナガスクジラは異性探しにそれほど苦労しなくなった一方、競争は激しくなりました。クジラに限らず多くの種がそうですが、体の大きなオスほど低音を発することができ、メスはそこに性的魅力を感じます。(参考記事:「フォトギャラリー:シロナガスクジラ」

――ウミホタルのように発光する生物は光でムードを高めるのでしょうか。

 その通りです。ウミホタルは「貝虫」と呼ばれる小さな甲殻類の仲間で、マメに似た形の殻にエビが入っているような生物です。オスは発光物質を出して一定のパターンで光り、メスを魅了します。まさに、小さな海のホタルだと感じます。(参考記事:「光る生き物の世界」

ハート氏によれば、オスの貝虫は「体の10倍もある特大の精子を作り出すものもいる」という。(PHOTOGRAPH BY FLPA, ALAMY)
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 研究者たちは、4億年以上前の貝虫の化石を入手して、生きていたときの3Dモデルを作ったことがあります。ある貝虫では、オスが体長の約3分の1というとんでもなく大きな交尾器を持っているのが確認されました。しかも、その交尾器は2つ1組になっていました。研究者たちは1対の肢から進化したのだろうと考えています。現在の貝虫もやはり交尾器が大きく、自分の体の10倍もある特大の精子を作り出すものもいます。

――ビックリするような性生活を送る生物はいますか?

 ホネクイハナムシというゴカイのような生物です。メスは深海底に沈んだクジラの死骸の骨に付着して生きています。最初、研究者はメスが体内に精子を持っているのに気付きましたが、オスが見当たりませんでした。よく見ると、精子に見えたものが実はオスだったのです。メスに比べて非常に小さなオスは、メスの体内にすみ、1日中メスのために精子を放出しているのです。(参考記事:「ホネクイハナムシほか深海の鯨骨生物群集の生態を探る」

「サンゴが一斉に産卵する光景を見るのは、人生観が変わる体験です」とハート氏は言う。(PHOTOGRAPH BY NICK CALOYIANIS, NATIONAL GEOGRAPHIC)
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――この本はサンゴの話から始まり、サンゴで締めくくられていますね。

 サンゴが一斉に産卵する光景を見るのは、人生観が変わる体験です。太古の昔から続いてきた自然のリズムが繰り返されるのを目の当たりにするのですから。さまざまな脅威やサンゴ礁の減少にもかかわらず、サンゴは毎年、時を違えず、新たな世代を生み出しています。多くの困難があっても、そこには希望を感じられます。(参考記事:「満月の夜のサンゴの産卵」

文=Liz Langley/訳=高野夏美

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