トラ寺院、147頭のこれから

特報:タイガー・テンプル闇取引レポート(その3)

2016.02.12
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生後5カ月のトラと一緒に写真に収まる観光客。139ドルを寄付すれば、子トラをなで、哺乳瓶でミルクをやることができる。(Photograph by Sharon Guynup)
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寺院か、動物園か

 私はバンコクにある国立公園局の事務所でアディソン・ヌッチタムローン氏に面会した。話の内容は、タイガー・テンプルが現在進めている再編成についてだ。彼らは組織を新たなトラ関連の事業を行う部門である寺院と、財団のふたつに分けるという。

 元カンチャナブリー警察の警視監で、現在はタイガー・テンプル財団の副代表を務めるスピポーン・パクジャルーン氏は私に、新たなサファリ風のトラの保護施設を計画していると語った。もうひとつのエリアは、人々がトラと触れ合うための場所で、トラたちはここで自由に繁殖することができるという。この計画の第一段階では500頭のトラを入れる予定で、彼らは12月に動物園として営業する認可を申請している。

 2015年4月以降、国立公園局は、タイガー・テンプルが所有する147頭のトラをなんとか押収しようと努力を続けてきた。彼らが法的根拠としているのは、トラは国の財産であり、それを利用して観光客から金を儲けるのは違法だという理屈だ。

 私がアディソン氏に、なぜそれが実現できないのかと尋ねると彼は言う。「これは非常に繊細な問題なのです」。寺院で働いているのは地元の人々であり、仏教的な習慣から、動物を寺院から連れ去るという行為には賛否両論がある。

 アディソン氏によると、寺院側は、動物園営業の許可を出してくれるなら、トラの半数を政府が連れて行っても構わないと交渉してきたという。しかしアディソン氏は言う。「寺院の中には、1頭のトラもいるべきではないのです」

 2016年1月、国立公園局は、第一陣のトラたちを連れ出そうとして拒否され、今では寺院の前門をふたりの制服を着た男たちが警備している。国立公園局は、147頭すべてのトラを寺院から移動させたいと考えており、必要であれば裁判所命令を取り付け、警察と軍の援助も頼むという。トラたちはその後、政府が運営する9カ所の野生動物保護施設に入れられることになる。

 一方、カンチャナブリー警察による行方不明のトラに関する捜査は、どうやら行き詰まっているようだ。

 宗教団体内部の犯罪行為を証明するのは容易ではない。熱心な仏教国であるタイでは、僧侶を起訴することはもちろん、その罪を告発するだけでも難しい。相手が寺院の院長のような高い地位にある人物であればなおさらだ。

 とは言え、先例がないわけではなく、またタイ王国国家警察庁の環境犯罪局は、申し立てのあった野生動物の密輸入や、関連する犯罪行為の捜査には精通している。アディソン氏は国家警察庁に対し、この件の捜査を、数週間以内に地元のカンチャナブリー警察から引き継いでくれるよう要請するという。

 まだ答えの出ていない疑問は数多く残っている。1999年以降、何頭のトラが取引されてきたのか――そして取引の裏にいる人物は誰なのか。取引のルートは? 寺院による密売は、より大規模なタイの野生動物取引ネットワークの一部なのだろうか?

 もしタイガー・テンプルによるトラの違法取引が証明された場合、国立公園局は動物園の認可を出すのかと、私はアディソン氏に尋ねた。「彼らが違法な野生動物の売買に関与している証拠がつかめれば」と彼は答えた。「許諾は出さないでしょう」(参考記事:特集「消えゆく王者 トラ」

おわり

文=Sharon Guynup/訳=北村京子

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