第9惑星の予言

 バティジン氏とカリフォルニア工科大学の同僚マイク・ブラウン氏は、新しい惑星を探そうとして研究を始めたわけではなかった。きっかけは、2014年に別の研究チームが、冥王星より遠いところに2012VP113という大きな天体を発見したことだった。非公式に「バイデン」と呼ばれるこの天体は、同じく冥王星より遠いところで見つかった「セドナ」という天体によく似た奇妙な公転軌道を持っている。

 セドナやバイデンをはじめとする太陽系外縁天体のいくつかは、太陽に対してやや傾いた軌道を回っているため、科学者たちは、遠方の天体の重力の影響を受けて、このような奇妙な軌道になったのだろうと考えていた。

 今回、ブラウン氏とバティジン氏は、こうした天体6個の軌道を詳しく分析し、単なる偶然とは考えられない集まり方をしているという結論に達した(バティジン氏によると「偶然そうなる確率は、わずか0.007パーセント」とのこと)。そこで彼らは、太陽系外縁部のシミュレーションをして、このような軌道パターンができた過程を解明しようとした。

地球の10倍の質量を持つ第9惑星(黄色の軌道。科学者たちは非公式に「ジョージ」「ヨシャファト」「猿の惑星」と呼んでいる)があれば、奇妙な軌道を持つ6個の太陽系外縁天体の軌道(紫)を説明できる。(COURTESY OF CALIFORNIA INSTITUTE OF TECHNOLOGY)
地球の10倍の質量を持つ第9惑星(黄色の軌道。科学者たちは非公式に「ジョージ」「ヨシャファト」「猿の惑星」と呼んでいる)があれば、奇妙な軌道を持つ6個の太陽系外縁天体の軌道(紫)を説明できる。(COURTESY OF CALIFORNIA INSTITUTE OF TECHNOLOGY)
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 カイパーベルト自体の重力が原因である可能性はすぐに否定できた。探すべきものは、単独の天体ということだ。

 そこで彼らはシミュレーションに第9の大きな惑星を追加して、その軌道と質量を調節していった。その結果、地球の10倍の質量を持つ惑星が卵形の軌道を運動していると考えると、セドナとバイデンをはじめとする奇妙な軌道を持つカイパーベルト天体の軌道を簡単に説明できることが明らかになった。

 このシミュレーションにより太陽系の軌道面に直交する軌道を運動する風変わりな天体群も説明できることが分かったところで、「自分たちの計算結果を真剣に受け止めるようになりました」とバティジン氏は言う。

第9惑星(黄色の軌道)が存在していれば、奇妙な軌道を持つカイパーベルト天体の軌道(紫)だけでなく、太陽系の軌道面に直交する軌道を持つ5個の謎の天体の軌道(青)も説明できるという。(COURTESY OF CALIFORNIA INSTITUTE OF TECHNOLOGY)
第9惑星(黄色の軌道)が存在していれば、奇妙な軌道を持つカイパーベルト天体の軌道(紫)だけでなく、太陽系の軌道面に直交する軌道を持つ5個の謎の天体の軌道(青)も説明できるという。(COURTESY OF CALIFORNIA INSTITUTE OF TECHNOLOGY)
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 バティジン氏とブラウン氏は、この惑星は太陽にもっと近いところで形成され、太陽系ができたばかりの頃に外縁部にはじき出されたのではないかと推測している。太陽は星団の中で誕生し、時間の経過とともに星団がばらばらになって孤独な星になったと考えられているが、この惑星がはじき出された当時はまだ周囲に恒星があったため、その重力の影響で太陽の重力がかろうじて及ぶ範囲にとどまることになったのではないかという。(参考記事:「巨大惑星、惑星系からはじき飛ばされた」

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