消えた19世紀の捕鯨船、アラスカ沖で見つかる

米国の商業捕鯨に打撃を与えた沈没事故の残骸か

2016.01.15
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2隻の沈没船から見つかった小さないかりとその他の金属部品。(PHOTOGRAPH BY NOAA)
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 米国アラスカ州北西沖の海を調査していた考古学者らが、19世紀の捕鯨船2隻の残骸を発見した。現場周辺は海水が凍結と融解を繰り返しているため、めぼしい発見物や原形をとどめた遺物はないだろうと考えられていたが、木製の船体の大部分と、いかりや鎖、支柱、クジラの油を入れる容器などの道具類が見つかり、関係者を驚かせている。(参考記事:「300年前の沈没船から財宝、王室献上コインも」

 この船は2015年9月に発見され、その後、米国海洋大気庁(NOAA)が遺物の分析を行い、16年1月6日に報告書が公表された。船体はあちこちが海洋生物の固い殻に厚く覆われているものの、冷たい海水のおかげで保存状態は良好だった。(参考記事:「17世紀に沈没したスペイン商船、積荷ごと発見」

「これほど長い間海底に横たわっていれば、氷の塊に押しつぶされて粉々になっていると考えるのが普通です」と、NOAAの考古学者で今回のプロジェクトの共同責任者を務めるブラッド・バー氏は言う。(参考記事:「19世紀に北極海に沈んだ探検船の内部が明らかに」

1871年に33隻の一斉遭難事故

 地球温暖化がなければ船は発見できなかったかもしれないと、バー氏は語る。例年よりも温暖な気候と、海氷の量が減少したことで、調査団は秋に入っても調査を続けることができたためだ。この海域では、19世紀後半から20世紀初頭にかけて、50~60隻の捕鯨船が沈没したとの記録が残されており、考古学者は以前から調査に入りたいと考えていた。

 調査団は、アラスカ州ウェーンライトで地元の先住民イヌピアットが船の残骸を拾ったという情報に基づき、そこからほど近いチュクチ海で、最新の音波探知機と磁気画像技術を使い、海岸に沿って44平方キロを調査した。(参考記事:「大富豪はどうやって戦艦「武蔵」を発見したか」

 船体は、海岸から100メートル足らずの場所で、海底の砂地に潜り込むように沈んでいた。バー氏は、「発見された2隻がどの船かを特定するのは不可能」としながらも、1871年に海氷に閉じ込められ、乗り捨てられた33隻の捕鯨船のうちの2隻である可能性が高いとしている。1200人以上いた乗組員は、全員が近くにいた船に助けられ、無事だったという。(参考記事:「ノルウェー 消えゆくクジラ捕り」

 さらにバー氏によると、この事故による損害額は現在の貨幣価値で約3300万ドル(約39億円)に相当し、すでに鯨油の需要が衰え、苦しい局面にあった米国の捕鯨産業に甚大な打撃を与えた。

「これが、米国の捕鯨産業を終焉に導くことになったのです」と、バー氏は説明する。これらの船は、当時捕鯨産業の中心だったマサチューセッツ州ニューベッドフォードを拠点としていた。

 バー氏は、沈没船を間近で調査するため、潜水チームを組んで出直したいとしている。やがてはこの海域を管轄するアラスカ州が、油田などの開発からこの海を保護してしまうかもしれない。この海では、他にも沈没船が見つかる可能性もある。(参考記事:「名作『白鯨』の元ネタは、もっと壮絶だった」

【フォトギャラリー】思わずゾクゾクする考古学フォトギャラリー

文=Brian Clark Howard/訳=ルーバー荒井ハンナ

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