「年を取るなんて最悪(What a drag it is getting old)」と歌ったのはローリング・ストーンズだが、アルダブラゾウガメのジョナサン以上にそれを実感している者はいない。御年183歳のジョナサンは、存命中の動物としては世界最高齢と考えられている。(参考記事:「最も高齢な動物たち、6つの例」)
アフリカ大陸西の大西洋に浮かぶ英領セントヘレナ島で暮らしてきたジョナサンも、視覚と嗅覚が衰えてきたせいで小枝ばかり食べる不健康な食生活を数年前まで続け、さすがに加齢の影響が色濃くなっていた。
ところが2014年、ジョナサンの衰弱に気付いた地元の獣医ジョー・ホリンズ氏がリンゴ、ニンジン、キュウリ、バナナ、グアバなど栄養価の高い餌を与え始めた。
1年後、ジョナサンは再びメディアに登場。セントヘレナの情報サイトに載ったホリンズ氏のその報告によると、健康を取り戻したようだ。
ホリンズ氏は2015年12月7日付で、「餌を変えて、ジョナサンは見違えるほど元気になりました」と記している。
「これまでは口の先端が丸まって柔らかかったのですが、再び鋭くとがり、力も強くなってきました。おそらく、ビタミン、ミネラル、微量元素などの微量栄養素が欠乏していたのでしょう」(参考記事:「沖縄、イタリア、カリフォルニアで探る長寿の極意」、「100歳の遺伝子」)
肉目当てに乱獲
アフリカの東に広がるインド洋の島々が原産のアルダブラゾウガメは「セーシェルゾウガメ」とも呼ばれ、大きなものは体重250キロにもなる。
人間が食用として乱獲したため、これらの島々にいた個体群の多くは、18~19世紀に姿を消した。現在、国際自然保護連合(IUCN)はアルダブラゾウガメ(Geochelone gigantean)を危急種(vulnerable)に分類している。
今残っている野生のアルダブラゾウガメの個体群は、多くがセーシェル諸島の外縁部、マダガスカル島に近いアルダブラ環礁に生息する。一方、ジョナサンは1882年以来セントヘレナにすみ続けている。
ウェブメディア「セーシェル・ニュース・エージェンシー」によれば、ジョナサンは当時の英国人総督への贈り物だったらしい。以来、今に至るまで総督邸の敷地内で生活している。
「ジョナサンは明日寿命を迎えるかもしれませんし、あるいは我々全員をあの世へと見送りながら250歳まで生きるかもしれません」とホリンズ氏は記している。
ガラパゴスゾウガメとは別種
アルダブラゾウガメという種を聞いたことのない人は多いだろう。1万キロ近く離れた島に住む親せき、ガラパゴスゾウガメと混同する人もいるかもしれない。だがこの2種は大きく異なっている。(参考記事:「ガラパゴスのゾウガメに「新種」発見」)
アルダブラゾウガメは「多くの人が想像するよりずっと面白く、社交性があります」と語るのは、セーシェル自然保護トラストの科学コーディネーター、ジャスティン・ガーラック氏だ。(参考記事:「“絶滅”の陸貝を再発見、セーシェル」)
彼らは野生環境ではグループや群れをつくり、開けた草原に集まるのを好む。
ガーラック氏によれば、「飼育下では、きちんと世話していれば人間とも友達になろうとする」という。中には、なでてもらいたがる者さえいるそうだ。
現在、アルダブラゾウガメが乱獲される危険はほぼないが、「さらに大きな脅威が迫っています」とガーラック氏は警告する。
その理由は、わずか1~2メートルというアルダブラ環礁の海抜だ。科学者たちは、世界の海面は2100年までに最大で1メートルも上昇すると予測している。(参考記事:「加速する海面上昇」)