サメが広大な海を回遊できる理由が明らかに

実験でわかった。目的地まで匂いをたよりに泳ぐ

2016.01.12
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海に戻したカリフォルニアドチザメを見守る船上のアンドリュー・ノザル氏。(PHOTOGRAPH BY KYLE MCBURNIE)
海に戻したカリフォルニアドチザメを見守る船上のアンドリュー・ノザル氏。(PHOTOGRAPH BY KYLE MCBURNIE)
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 広大で、どこを見ても同じような景色に見える海の中で、サメたちが正しく目的地へと到達できるメカニズムはずっと謎だった。今月、サメが「航路」を決める手がかりの一つが匂いらしいことが、科学誌「PLOS ONE」2016年1月6日号の論文で発表された。この研究によれば、サメは嗅覚を頼りに、深海の中で進むべき方向を見つけ出すのだという。

 長距離を移動するサメは多い。実際、ホホジロザメは、ハワイからカリフォルニアまで移動するし、ネズミザメはアラスカ沿岸と太平洋亜熱帯海域の間を回遊している。

 これまで研究者は、サメは匂いや地球の磁場を手がかりに回遊すると推測はしていたが、肝心の証拠と言えるものがなかった。(参考記事:「“ホホジロザメ追跡”がネットで話題に」

匂いをたどって里帰り

 米国のカリフォルニア州サンディエゴの近海で行われた実験は、次のようなものだ。まず、野生のカリフォルニアドチザメ(Triakis semifasciata)を沿岸の生息地から10km離れた海域まで移し、追跡装置を取り付ける。そして、一部のサメは鼻孔に綿を詰めて嗅覚を使えないようにした。

 スクリップス海洋学研究所とバーチ水族館の博士課程を修了した研究員であり、今回の研究のリーダーをつとめたアンドリュー・ノザル氏によると、鼻をふさがれなかったサメは、本来の生息地と逆向きに放流されたにもかかわらず、わずか30分後にUターンしてまっすぐ自分たちがくらす岸に向かったという。(参照記事:【動画】ビーチでホホジロザメに囲まれた!

 一方、鼻孔に綿を詰められたサメたちは「迷ったように見え」、あてもなく蛇行して「鼻をふさがれなかったサメよりゆっくり泳いでいた」という。

 サメの方向感覚を調べるため、ノザル氏らは数十匹のカリフォルニアドチザメを捕獲した。カリフォルニアドチザメは米国のワシントン州からメキシコ北部にかけての沿岸海域に生息する小型のサメだ。捕獲したのはすべてメスの成体で、体長は平均1.5m。研究者は数匹のサメの鼻孔に綿を詰めると、より水深のある海域まで移動してサメを傷つけないように注意して放流した。

 ノザル氏らの論文によると、鼻孔に綿を詰められたサメたちは岸に向かって戻ろうとはしていたが、鼻孔をふさがれなかったサメたちは「一直線」に回帰した。

 ノザル氏は、サメは陸地に近づくほど濃度が高くなるような化学物質を嗅ぎ分け、それを頼りに回帰するのではないかと考えている。

はじめの一歩

 しかし、この解釈に納得しない研究者もいる。米ハワイ大学マノア校の海洋生物学者キム・ホランド氏は、鼻をふさがれたサメは「鼻に何かを入れられたこと自体に動転したのかもしれません」と指摘する。

 米国のニューカレッジ・オブ・フロリダの感覚生物学者ジェイン・ガーディナー氏も、サメが陸地に近づくほど強くなる匂いを追いかけている可能性は低いという。

 ガーディナー氏は、サメたちは陸地の方からくる何らかの匂いに注意を引かれ、その他の手がかり(たとえば、水温や光量など)をたどって、いつものたまり場に戻ってくるのかもしれないと考えている。(参照記事:「驚くべき動物の帰巣本能」

 実験で鼻をふさがれたサメたちも最終的に陸地に向かおうとしたのは、「匂い以外の何かをつかっていたことを示しています」と彼女は言う。

 一方、研究チームを率いたノザル氏は、鼻孔に綿を詰められたサメたちは自発的に餌を食べていたことから、「動転などしていなかったはずだ」と反論する。

 とはいえノザル氏も、サメが匂い以外のマーカーを用いて、「道」を見つけていることには同意する。「私たちが言いたいことは、サメのナビゲーションに匂いが大きく関与しているということです。研究は、謎を解く第一歩にすぎません」

文=Traci Watson/訳=三枝小夜子

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